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「───良かったの?」
『ん?』
母(と運転手の叔父様)を見送り、ウチと由唯くんはリビングでそれぞれ家事をしていた。
洗濯物畳みを手伝ってくれている由唯くんは手を止め心配げな目でこちらを見上げている。
ウチは食材を切る手を止め、微笑みを返した。
『お母さんを引き止めたい気持ちはあったよ。
でもね、それと同じくらいあちら(外国)でもお母さんが必要なんだって知ったらなんか……』
「……引き止められなかった?」
流石 由唯くん、なんでも分かっちゃうんだね。
ウチは頷き言葉を続ける。
『お母さんはウチと一緒にいたくてここに来たよね。
で、ウチの行きたくないって我儘を聞いてくれてここに留まってくれた。
だから、これ以上引き止めるのはお母さんや必要にしている人達に失礼だもん』
かといってお母さんにはついて行かないよ。
だって、
ウチは手を洗い、ローテーブルで洗濯物を畳んでくれている由唯くんの前にしゃがみ込んだ。
『ウチはせんせいや弟妹たちの……』
出かけた言葉が詰まりそうになる。
でもだめ、ちゃんと言わなきゃ。
ウチが首を傾げると赤いリボンが目の端で揺れる。
『──由唯くんの、傍にいたいから』
目の前の由唯くんは唖然と言葉を失っている。
心臓が痛い。
「せっちゃ──“ ボーン ”──ッ?!」
『あ、もうこんな時間だ』
夕刻を告げる鐘の音が、リビング中に響き渡った。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時