眠れぬ夜は 君のせい 後編 【由唯 side】 ページ32
*
洗面や、明日の予定の確認を終え、携帯電話のアラームをセットしてベッドに身体を埋める由唯。
横を向くと、隣のベッドで刹那の緑の瞳と視線が合う。
『おやすみ―――せっちゃん』
少しの寂しさと、名残惜しさを感じながら声をかけると、「おやすみ、由唯くん」との微笑の後、くるりと背中を向けてしまう。
由唯は、静かに瞳を閉じた―――
が。
眠れるわけがない。
元々夜型で、この時間は起きて何かしらの作業を行っている事が多い。バイクを走らせ、家に戻っていない事すらある程だ。
おやすみの挨拶から、1時間は経過しただろうか…
ちらりと横に視線を向けると刹那は背を向けたまま全く動かない。微かに聞こえる寝息が、余計に由唯の思考を覚醒させる。
寝なければいけないと思う時程、眠れないのはよくある事だろう。
(まぁ、相部屋を言われた時から、こうなるとは思っていたけどな―――)
さて、どうしようか―――
音を立てると刹那が起きてしまうかもしれない為、パソコンでの作業は諦めよう。ホテルをぐるり散歩…も、今は気分ではない。あれこれ考えた挙句、由唯は荷物の中からワイアレスイアホンを取り出し、Bluetoothを接続した。携帯電話のアプリケーションで、音楽を再生し、頭の上まで布団を被った。
聴いているうちに寝落ちするだろう―――そう、考えていた。
「―――……。――――くん」
頭の上で、かすかに何かが聞こえる。背中側のスプリングが沈み込む感覚に気づき、由唯はハッと上体を起こした。
『?!―――っえ?』
「っわ?!」
小さな悲鳴の方を見ると、寝ていたはずの刹那が驚いた様子でベッドサイドに立つ。
急に起き上がる由唯に驚いたのか、緑の瞳を大きくしばたたかせている。
『せっちゃん?どうしたの―――怖い夢でも見た?』
「え、あ……ううん――」
由唯くんが、まだ起きてるって思って――
下を向く刹那は、両手を組んで指を動かす。
ああ、イアホンの接続に物音を立てていたからか―――
『ごめん、起こした……』
「違うよ、ウチも―――眠れなかったから」
由唯くんが起きてるなら、お話出来るかなって思って。
気を使わさない様に言ってくれているのだろうか、
(―――寝息が、聴こえていたように思うけど……)
くすっ――
由唯は、刹那の気遣いにあえて突っ込むのをやめた。
まだ眠気はないし、刹那が話をしてくれるならむしろ願ってもない事だ。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時