眠れぬ夜は 君のせい 前編 【由唯 side】 ページ27
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夏季休暇も終盤となる今日…
由唯と刹那は飛行機で遠征に出かけている。
―――保護者同伴、で。
バイクイベントは全国各地で開催されるが、由唯と刹那は近場の日帰り可能なイベントのみを手伝っていた。先日の誘拐事件もあり、刹那の気分転換にとの配慮なのか、旅行ついでに行ってみては?という、せんせいの了承を得て、今回は泊り掛りでの出張バイトである。
由唯にとっては、出張バイトもバイクレースの遠征も日常茶飯事だが、流石にバイトで泊りの出張など初めてだろう刹那は、飛行機の隣の席で落ち着かない様子。
前の席に座る叔父の会社の社員(レースクイーンのお姉さん達)は、そんな刹那を気にかけて、声をかけてくれた。
「刹那ちゃん、お菓子たべるぅ?」
「あっ、はい!有難うございます!」
くすっ
(―――……小学生の、遠足だな)
その様子に、思わず笑いが込み上げる。
イベントバイトで何度も顔を合わせるうちに、すっかり彼女達と友達になっていたようだ。遠征となれば、同性の友達がいるのは刹那にとっても心強いだろう。イベント会場で刹那が男性客の対応に困っている時でも、由唯に代わって彼女達が上手く対応してくれるため、由唯にとっても心強い存在だ。
飛行機を降りた後は、現地の支店スタッフの迎えを受け、車で会場へ。簡単な打ち合わせミーティングを交わした後は、サーキットに隣接して作られたイベント会場でパンフレットの配布や売り子を行う刹那に、デモンストレーション走行を行って会場を盛り上げる由唯。
たかが期間限定バイトと侮ることなかれ―――既に二人は、イベントに欠かせない戦力となっていた。
大盛況で1日目を終え、本社スタッフは会社が用意していたホテルへ。
叔父の圭吾がチェックインを行っている間、由唯は刹那の隣に腰掛けた。
『お疲れ、せっちゃん―――』
アクシデントはなかった?ナンパされていない?
矢継ぎ早に降ってくる言葉に、刹那は「大丈夫だよ」と苦笑い。
(―――あ、やってしまった……)
この日は別々の場所で仕事を行っていた為、刹那とほとんど話すことが出来なかった。移動中の車内でも、一緒に仕事をしていたレースクイーンのお姉さん達と楽し気に話をしていた為声をかけるのも憚られ、由唯の中では刹那と話せない事でのフラストレーションが溜まっている。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時