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圭吾のメッセージに疑問を抱えていると、なにやら奥の間が騒がしい。

「誰ですか、貴女は!!」「困ります―――誰か!!」

声のするドアの方を振り向くと同時に、装飾の施された重い扉は乱暴に押し開けられた。

「はーい!お邪魔しますよ〜。私の可愛いRegenprinzを、返してもらいます」

明るい声と共に押し入ってきたのは、ふわふわの黒髪を揺らした刹那の母――――

『・・・・・・はぁ?』

状況が呑み込めず、引きつった声と惚け顔で止まっていると、聞き慣れた声が追いかけてくる。

「ダメでしょ、お母さん!日本のお家は土足厳禁なんだから!」
律儀な事に、「すみません、母が―――」と周囲の女中に頭を下げて回る刹那。

よく見れば、刹那の母は靴のまま廊下の畳に立っており、刹那は靴下姿。



フッ……

なにそれ―――

刹那の事だから、きっとご丁寧に玄関先に、靴を揃えて上がってきたのだろう―――


……っはははは!!


―――ああ もう、可愛すぎる!



突如声を出して笑い出す由唯に、テーブルを挟んだ母達の顔も、呆気となる。

「――――ッ由唯……くん」

少し涙目な緑の瞳に、今までの緊張が嘘のように絆される。
由唯は椅子から立ち上がり、真っすぐ刹那の元に歩み寄ると、そのまま彼女の肩をだいて抱きしめた。

「大丈夫?由唯くん……何もされてない?」

由唯の全身を見渡しながら、心配する刹那。

『俺は大丈夫だよ、何も食べてない。それよりせっちゃんの方が――――』


由唯は、刹那の両手首の赤い傷跡を見た。
はっとした刹那が、手首を隠すように後ろを向こうとするが、由唯の手がそれを許さない。

『―――全然、大丈夫じゃないね……ゴメン、俺が巻き込んでしまったせいだ』
「違うよ?これはウチが―――」

慌てて弁解を口にする刹那の言葉を遮る様に、刹那の母が由唯に言葉を投げた。

「ところで由唯くん―――後輩が色々動いているようで、取引が潰れた今や七瀬の家にとって、須藤と結託するメリットを得ないわけだが……面白そうだからこのGAMEに“綿貫”も加戦しようと思う。」

―――その処遇を…キミの心次第とするが―――どうする?


“綿貫”?

その言葉を聴いた母達が、小さな悲鳴を上げ、顔を見合わせて青ざめた。
由唯の脳裏にはいつぞやかの、叔父の言葉が蘇る。

―――“あの人”がいるなら ここは世界で一番安全な場所だろうよ

……何。そういう事―――?
  可愛い顔して、凄い人だな―――せっちゃんの母。

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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月9日 9時

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