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要は―――七瀬にとって須藤に利用価値が無くなればいい。逆に、須藤にとって七瀬を上回る価値を持つ第三者が現れればいい。
『―――っで。父は須藤の持つ“何”が欲しいんだと思う?逆に―――須藤は七瀬を、“何に”利用したいんだと思う?』
由唯の冷たい瞳に、圭吾は一瞬、背を凍らせた。
言っている事が、目茶苦茶だ―――。
スケールが大きすぎて、当然学生がどうこうできるレベルではない。
だというのに―――コイツの眼は、何を視ている……
好きな子(綿貫刹那)と、好きな物(バイク)を取られそうになって、自棄になっているのか?
気持ちは分からなくもない―――オマエをこうさせてしまったのは、他ならぬ大人達なのだから。
「バカな話はよせ。たかが学生がどうこうできる話じゃない」
頭のいいオマエなら、そのくらい分かるだろう?
『俺がするなんて、言ってない――。言ったろ?』
“使えるものは叔父でも使う―――”
―――情報(資源)は、どう使うかが重要…なんだっけ?
1000ccクラスのアマチュアバイクレースを続けるには、それなりの後ろ盾が必要だ。その多くが、アマチュアながらにスポンサー契約を結んでいたり、時間や金銭的な余裕がある奴が多い。
(ああ、そういう事……)
圭吾は、オレンジジュースのストローを咥えながら、にっこりと笑うその笑顔の“意味”を知る。
―――コイツ。初めっから、そのつもりだったな……。
圭吾は、無邪気に細められた飴色の瞳に、兄の瞳を重ねた。
やっぱりオマエは―――あの人の子どもだよ。
“後は大人に任せて、子どもは大人しくお家に帰るよ―――”
そう言って後ろ手を振る由唯を、圭吾は呼び止める。
「そうそう―――言い忘れるところだった」
『――――説教なら、聴かないよ?』
そう言うな、と肩を叩き、眉を顰める由唯に“あの人”の言葉を伝えた。
“刹那は私達で守る。
だから、キミはキミのやるべき事を全力で成せ。“
由唯は表情を一層、怪訝そうに深める。
『―――……情報源は、誰?』
「―――そうだな…人生の先駆者(パトロン)とでも、言っておこうか」
何かを探るような瞳で、じっと圭吾を見上げた後、『一応受け取っておく』と言葉を吐いて、由唯はカフェを後にした。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時