影 【由唯 side】 ページ15
*
サーキットに程近い、ライダーズカフェ―――
駐車場は様々にカスタマイズされたバイクが並び、店内では先刻のレースの興奮が止まずにいた。
乱暴な言葉も飛び交うが、誰も酒を手にしていない所が微笑ましい。
皆、この後は愛車を運転して帰る為だ。
「あー七瀬さん!お疲れ様っス!」
「おう!」
軽く片手を挙げる圭吾の隣には、由唯もいた。
「珍しいな、由唯がオフ会参加なんて―――」
『あはは、保護者同伴…だけどね』
ちらりと圭吾を睨み上げると、楽し気に鼻を鳴らす。
(―――だから、一人で行くって言ったのに)
昼間のレース終わり。まだ外も明るく、ここは酒が提供されているわけでもない。
“情報収集”に、オフ会に参加すると口を滑らせた由唯に、じゃぁオレもと圭吾がついてきたのだ。
正直なところ―――圭吾が隣に付いていてくれる事は、有難かった。
このチャラ男―――七瀬圭吾は、こう見えて元カリスマライダーで顔も広い。
“使えるものは叔父でも使うからな…”と釘を刺した由唯に、“情報は、持っているだけじゃ意味を持たない。どう使うかが重要だ”と指摘し返した。
「で、何の情報が欲しいんだ?」
渡されたオレンジジュースに顔を引きつらせながら、由唯は圭吾に耳打ちする。
『上層の事情に詳しい、インサイダー(内通者)と接触したい』
穏やかではない由唯の言葉に、圭吾はにまにまと笑っていた表情を固めた。
「それを知って―――どうする気?オマエ(学生)に…何が出来んの?」
冗談交じりに添えられた圭吾の言葉尻に、警告を受け取る由唯。
勿論、中途半端に首を突っ込むつもりは毛頭ない。
『七瀬の家(親)ごと潰せれば一番いいんだけど―――まずは須藤潰しだな』
「大きく出たねぇ―――須藤は由緒ある家柄…お前の父が後ろ盾にと欲しがる程の家系だ。潰す前に潰されちまうぜ」
これだから世間知らずの学生は―――
頬杖を突き、ため息を零す圭吾に、由唯はにんまりと口を綻ばせた。
『だから―――インサイダー(内通者)だ』
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時