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────って、あれ?
『なんでせんせい達が叔父様の連絡先交換を知っているの?』
ウチは教えたっけ?
首を傾げるウチの頭上で母が可笑しそうにクツクツ声を漏らした。
計画を企てた同日。刹那が眠った後に私は徐に携帯を手に取った。
2回のコールの後、誰かが電話に出る。
「数日ぶりね──圭吾」
“「やはり掛けてきましたか、綿貫先輩」”
予期していたからかさ程驚いていないにしろ。
嬉しそうでもない。
「刹那に連絡先を渡すなんていい度胸してますね?」
“「……これは、貴女と連絡をとるための手段でもありました」”
貴女なら必ず確かめてくると思いましたからね。
「当然」
誰のためでもなく娘のため、ですからね。
………さて、茶番は終わりにしよう。
「由唯くん、だいぶ参っているみたいだ」
“「……ええ」”
電話越しにも伝わる彼の気苦労の深さ。
甥っ子を想うからこそだろう。
「刹那にも気をかけてくれているようだね」
だからこそ、気持ちが定まっていない。
昔の私のように──。
親のレールを生きる自分に疑問を抱くもそれに抗えないもどかしさ。
好きなことを好きと言えず、息の詰まる思いをし続けた学生時代。
そんな私を気にかけてくれた圭吾に、私が何度救われたことか。
だからこそ言える。
私は経験で得たヒントをまだ若い彼に託すことにした。
「圭吾、由唯くんに伝えて」
刹那は私達で守る。
だから、キミはキミのやるべき事を全力で成せ。
“「…………貴女から 全力 なんて言葉が出るとは思いもしませんでしたよ」”
「煩いよ」
経験者からのアドバイス、ちゃんと聞いてくれるといいけどね。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時