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『因みに、一応ウチの母親です』
「一応ってなんですかぁ？！刹那ぁー！」
引っ付いてくる母を剥がしながら聴こえた小さなつぶやきにウチは耳を寄せる。
“「《綿貫家》って言ったら医療界において絶大な権威を持つ家系！
しかも綿貫彩子は綿貫家きっての天才で……ｯ」”
みるみるうちに顔色が青くなっていく千世さんに、ウチは《綿貫》の大きさを知った。
「家系の線で言ったら、刹那も充分素質があると思いますよ？」
(でも、彼女たちはそれを欲しない)
むしろ要らない、と簡単に手放すだろう。
隣に立つ娘にの凛々しい姿に、私は嬉しいような寂しいような複雑な思いを胸に抱いていた。
「──はい」
母から手渡されたのはカナルタイプのワイヤレスイヤホン。
耳にはめると
“「お疲れ様、刹那ちゃん」”
『！せんせい！』
せんせいの柔らかい声にウチへ口元が緩む。
“「今、圭吾くんから連絡があったわ」”
由唯くんが、家族に連れていかれた、と。
「きっとあの婚約者の所でしょうね」
通信の途切れた携帯画面は真っ暗で虚しく天井を写している。
せんせいも小さく「恐らく」と返していた。
『行こう！』
今度は、ウチが彼を迎えに行く番。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月9日 9時
