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建物の影に誘い、呆然脱力する由唯の背中を、温かい手が 優しく撫でた。
そのぬくもりが、取り乱した心を 解してくれる。
『―――腕、引っ張ってゴメン…痛かったよな』
落ち着きを取り戻した由唯は、強く握ってしまった刹那の右手首を手に取った。
「ううん、ウチは大丈夫―――七瀬くんの方が…」
大丈夫―――?
緑の大きな瞳が、視線を合わせて覗き込む。
『―――ゴメン』
巻き込んでしまって―――……
落ち着いたはずなのに、次の言葉が口から出てこない…
何を言っても、言い訳のようで―――
刹那からの次の言葉が、怖くて…
―――有事にだって冷静で在れ。
早く大人になりたくて、アイツ等から逃げ出したくて、負けたくなくて
数手先や、相手の思考を読み 先を行動できるように注意していた…
それが、この様だ。
今の俺は―――ただ駄々をこねる子供の様だ……。
言葉を紡げない由唯の隣に座り、刹那はじっと待ってくれる。
突然現れた失礼な女に、文句の一つもあるだろう―――だけど、矢継ぎ早に聞く事をせず、言葉を押し付ける事もせず。
レースアクシデントの時も…そうだった。
それが、心地よい―――
だから…君が好き―――
「―――由唯くん」
『……?!』
寄り添う刹那の声に、ビクリと肩が震える。
だけど、彼女の言葉は 由唯の想像とは違いっていて―――
「ウチは、由唯くんの言葉を信じているよ」
なんか、色々複雑そうで―――大変そうだけど…由唯くんが落ち着いたら、いつでも話は聴くから
―――……
『せっちゃん、ありがとう』
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月9日 9時