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「Prinzessin(お姫様)は―――Regenprinz(王子様)のキスで目覚めるものですよ♪」
『―――えっ』
慌てる由唯の隣に座り込み、セツはじっと若草色の瞳で視線を合わせる。
隣でニコニコと微笑む少女―――セツの表情を見れば、この不可思議な夢はきっと、このキスで終わりを迎えるのだろう。
『―――していいなら、するけどね』
腕の中で眠る、刹那の顔に息を呑む。
夢とは思えないような、その柔らかな頬に手を添えた。
そう言えば―――
この夢が醒めたら、こうしてセツとも話が出来なくなるのか……
ちらりと横を見ると、セツは若草色の大きな瞳をじっとこちらに向けている。
『―――セツ。 俺のところに来てくれて、ありがとうな』
突然に声かけられたことに驚いたのか、一瞬きょとんと大きな瞳を見開くセツは、直ぐにニコリと満面の笑みを見せた。
「―――パパ。私は、パパのお家に来られて、幸せです！」
こんな風に、仔猫のセツと会話できることなんて、現実世界ではあり得ない。
これは俺の夢なのだから、このセツの言葉も、俺が都合よく作り出したものなのだろうけど―――
本当は、心のどこかで心配していたんだ…
君は、俺でよかったのかな―――って。
君の居場所は、ここでよかったのかな―――って……
『ありがとう―――』
由唯は眠る刹那の唇に 自らのそれを深く重ねた。
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ピピピ―――
軽い電子音に、意識が呼び起こされる。
自動で開いたカーテンの向こうで、朝日が空を黄色く染めていた。
『―――このタイミングで、起きんの……ズルくない？』
小さく息を吐きだした後、上体を起こす。右手には、なんとなく柔らかな感触が残っている気さへする。
(―――俺、どれだけ都合いい夢見てんだよ。……ってか、欲求不満？)
「みゃぁ―――」
足元の布団の上で、仔猫のセツがミルクを強請る。
そうそう―――朝ご飯の時間だよな。
大きな背伸びで固まった関節をほぐした後、セツのミルクを用意するため、キッチンへと向かう。
ちりん――と鈴の音が、由唯の足元を追いかけた。
今日のバイクは、少し遠出しよ―――。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月3日 23時
