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『なんだってこう―――ドラマみたいに夢の続きが見られるんだよ!』
「パパ、先日よりもずっと動きが良くなっています!特訓の、成果ですか?」
少し離れた場所で、セツが叫ぶ。
そう言えば、ヴァイオリンの弓をゲーム動画に合わせて振り回しているところを、セツに見られていたな。自分で言うのもアレだが、昔っから要領と飲み込みの速さは良い方なんだ。
まるでセーブされたゲームの続きを行うように、目の前には牛の頭をした化け物が斧を振り回していて、
その後ろには―――気を失っている刹那が鎖に巻かれて動けないでいる。
『こんな趣味の悪い夢―――さっさと終わらせてやる』
由唯の剣を持つ右手に、力がこもった。
想像したように動かせる身体は軽く、現実世界ではあり得ないような動きが可能だ。
壁を走り、踏み込んだ右足で大きく空中を舞う――
3度目の―――夢の続きがある。そんな予感はしていた。
だから、インターネットにアップロードされているゲーム動画をひたすら見てきた。
現実世界のGAME(レース)でも、成功イメージしか描かない。ひたすら優勝するイメージだけを身体に叩き込み、ハンドルを握る。
これは夢だとわかっている。だけど―――
現実以上に、負けられない理由が“そこ”にある。
イメージ通りに動く身体と右手は、モンスターの斧をたやすく回避し、その大きな体に幾千ものダメージラインを重ねた。
モンスターの動きが、段々と緩慢になっていくのを、意識で感じる―――
攻撃は、確実に効いているようだ。
『オマエ(夢)は、俺の中で一番引き合いに出しちゃいけないものを、見せたんだ』
高く跳び、牛の眉間に剣を深く突き刺した。
ご丁寧に響き渡る断末魔と共に、モンスターは灰のように崩れて消えていった。
モンスターが消えたと同時に、刹那を縛る鎖が解け、その体は重力に従って無防備に落ちて来る。
『―――ッ刹那!』
咄嗟に下で受け止める。両腕にかかる重さも―――これも、夢だというのなら
随分とリアルで、不気味だ。
『せっちゃん―――おい、起きろ!』
肩を揺するが、彼女が目覚める様子はない。
―――なんだよ、GAMEはもう、終わったんだろう?
夢だと自らに言い聞かせながらも、胸を抉るような焦りが溢れ出す。
『どうしたらいい?セツ……どうしたら、刹那は――』
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時