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「もしかして、これ…七瀬？」
「うそ、七瀬バイクのレースやってんの？しかも、優勝って―――」
一人のざわつきは波紋を呼び他の女子達を引き寄せる。ウチ以外の女子は全員リビングボードの雑誌に集まってしまった。
これ、ちゃんと課題終わるのかな？
先の見えない終わりと空いた隣の寂しさに、ウチは肩を落とした。
「──なあ、綿貫ここなんだけどよ」
まだ課題をしてくれていた人がいた！
空いた隣りに移動してきた男子のクラスメイトが申し訳なさそうに分からない問題発言を提示してくる。
文系……ならウチも教えられるね。
『ここはね──』
なるべく分かりやすく飽きさせないように、彼まであちら側に行ってしまったらもう取り返しがつかない。
ウチは慎重に言葉を選びながら自力で解けるように促した。
「……綿貫の解説、先生より分かりやすっ」
『大袈裟だなぁ』
素直に褒められると照れるものだ。
ウチは頬を掻き『他に分からない所はある？』と話を逸らした。
「今ので最後。綿貫のおかげで終わったわ」
『ほんと？なら良かったね』
1人でも無事ノルマが終われたならウチも指導係としてついてきたかいがあるというものだ。
あとは、あそこにいるみんなをどうこちらに誘導するか、だね。
徐に賑やかな方へ目を向ける。
「バイクモデルやってたんだね！このカフェどこ？おいしそー」
「こんな特技あるなんて意外！凄いじゃん！」
雑誌の由唯くんに興奮気味な友人たち。
たまに由唯くんに触れるのを見かけ、胸の奥がチクリと痛みを発する。
──なんか、嫌だなぁ。
見ていられなくて目を逸らした。
「綿貫、大丈夫？」
『う、うん！大丈夫』
無理やり笑うことで誤魔化すけど、やっぱり後ろが気になる自分がいる。
クラスメイトの話にウチは何となく相槌を打つ。
でもごめんね。
ハッキリ言ってキミの言葉は耳に入ってこないんだ。
「綿貫、今度さ――― 「せっちゃん！」」
目の前の声より、後ろから聞こえた呼び声の方が耳に馴染む。
ただ音量が大きかったからちょっとびっくり。
振り返ると何故が必死な目で訴えかけてくる由唯くんがいた。
「―――悪い。野菜室に実家からもらった果物あるんだけど―――切り分けてくれない？」
『えっ―――あ、うん。いーよ』
その必死さにウチは思わず頷き、従うようにキッチンの方へ足を向ける。
後から来てくれた友人にもして欲しいことを指示し果物を切り分けた。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月3日 23時
