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「探検に来たんじゃないぞ?さっさと課題を終わらせる―――」
「そう言うなって!スゲーな、ここ…家族で住んでる俺んちより広いぜ?」
「煩いよ、さっさと課題しろ!」
由唯くんのため息が聞こえ気苦労を察し、何か手伝えないかと内心思考を巡らせた。

「七瀬、お皿やコップ借りていい?」
「あるならどうぞ」
家主の許可を取りつつ、持参したお菓子を取りやすく並べ、ローテーブルに運ぶ。

キッチンからコップのことを聞かれたのだろう。
小さく「――そんなにコップあったっけ?」と呟く由唯くんに そっと近寄り
『シンク上の右戸棚―――』と耳打ちをした。
先日 料理を作りに来た時に見かけた場所を伝えると、由唯くんは「―――ありがと」と小さく微笑みキッチンへと消えていった。

これなら助けになれるかな。
ウチは密かに頑張ろう、と意気込み 途中だったお菓子の運搬を再開した。

キッチンはみんながいて危ないし、ケーキはローテーブルで切ろうかな。
布に包んだ包丁を持ちローテーブルの前に座る。
8人分だから……

「ってか、七瀬キッチン綺麗だね―――料理作ってる?」
キッチン側から楽しそうな声が聞こえる。

「簡単な物しか作らない」
「冷蔵庫空っぽだもんね」
「大丈夫?ご飯作りに来てあげようか」
「……」
背後の由唯くんは返事を返さない。
様子が気になって振り返ると不機嫌そうに頬杖をついている姿が目に入った。
由唯くんってプライベートに入られるの嫌だもんね。
ウチも同じことしてるし、申し訳ないなぁ……。

目が合うと笑みを返される。
由唯くん、無理して笑ってない?
手助けどころか気を使わせてしまうなんて……自分が情けないよ。
視線を手元に戻し、さりげなく由唯くん分のケーキを大きく切り分けた。
ごめんねの謝礼も込めて。
ストンと軽い音を立てて隣が埋まる。
見るとこちらを覗き込んでいる由唯くんがいた。

「せっちゃんが気にすることないよ。人が多いと警戒するから、セツには寝室にいてもらってるんだ」
エアコンはかけているけど、時々覗いてくれる?

みんなには聞こえないようこっそりと教えてくれる由唯くん。
2人だけの秘密になんだかむず痒くて、でも嬉しくて
『うん、わかった―――』と秘密を保持する頷きを小さく返した。

そういえば、母から持たされた新しい玩具とチュールがあったはず。
様子を見に行く時に持っていこう。
そう決めた。

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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月3日 23時

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