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ひときわ賑やかしい外とは対称的に、ここ(医務室)は酷く静かだ。

スプリングの滑りが悪いデスクチェアの背もたれに体重を掛けながら、棚にあったものを片っ端から読み耽っていく。
デスクに積み上がったそれは全てここの利用者のカルテ(診療録)。

簡単な怪我から病院へ移送するレベルのものまで様々に記録されており、ここの管理者の几帳面さが見て取れる。
ただ、こうも他者に見られる可能性が高いと
プライバシー問題に発展しそうだ。
情報セキュリティの強化について圭吾に相談してみようか。
仕事のことなら私の言葉でも耳を傾けるだろう。



──!──!!


さっきから気になっていたが、外が少し騒がしいな。
ここはいつもこうなのか?
なら私は耐えられないかもしれない。
騒がしいのは嫌いだ。
雑踏は嫌いだ。
野次馬は──大嫌いだ。


────タッタッタッ
「お母さん!!」

『ん?どうしました?刹那』
そんなに息を切らして。

肩で息をしている娘に近寄り彼女の肩に手を置く。
娘は深呼吸を2回してから私を見上げ、焦った表情で声を張った。

「レース中に事故があったの!お願い来て!!」
何とも数奇な事だ。
ここには休暇で来ていたつもりだったのに。
だが、最愛の娘にこうもせがまれては断ることも出来まい。
私は二つ返事で了承し、道中すれ違ったスタッフにストレッチャーを運ぶよう指示を飛ばした。





サーキットのコースに血痕が飛んでいる。
中心には人だかりが出来ており、無意識に眉間に皺が寄った。

『刹那はここにいなさい』
「ッでも……」
明らかに顔色が悪い。こういう光景は後のトラウマになりかねない。それに…
『貴女が来ても邪魔になるだけ』
「ッ!」
己と同じ緑色の目が恐怖の色に変わる。けれど、今は構っていられない。
『由唯くん、娘をお願いします』
「……はい」
若い者は若い者に任せ、私は嫌いな人混みの中を掻き分け中へと踏む行った。

『──はいはい。通してくださいよー』
「ッなんで貴女が」
『仕方ないでしょ?娘の頼みなんだから』
圭吾の野次を軽く流し、医務室の主だろう白衣の男性に状況説明を求めた。

「えっと……」
渋る男性に苛立ち舌打ちを盛大に落とす。
もういい…自分で診るから。

男性を押し退け 被害者の容態を素早くチェックする。
左頭部からの出血の量。顔色の具合。
診ながら薄いビニール手袋を装着し、触診を行った。







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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月3日 23時

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