ラング・ド・シャ 【由唯 side】 ページ38
*
バイクイベント終わり。刹那が夕飯を作りに来てくれるという―――
何かリクエストはあるかと聞かれた為『カルボナーラが食べたい』と伝えた。
帰り道、ベーコンブロックと卵、チーズとパスタを買って戻り、セツと遊んでいる間にキッチンから漂うチーズのいい香り……
刹那と一緒に食べる夕飯は、この上なく美味しい―――
濃厚なチーズに隠れるように入れられた玉ねぎ(カルボナーラに玉ねぎって入れる?!)も、刹那が作ってくれたものなら甘んじて食べる。
夕飯の片づけを終えた刹那が、キッチンで「うーん」と悩み声を上げた。
「七瀬くん―――卵白だけ沢山余ったのだけど、何か使える?」
『―――………』
刹那の声を、由唯が聴き洩らすはずがない。
だが、セツをあやしながら、あえて返事を返さなかった。
暫くすると“その意味”を理解したようで、刹那は再び声をかける。
「―――もぉ。”由唯くん”ッ!」
『はい!卵白の使い道なんて分らない』
聴こえているくせに…と頬を膨らませる刹那は可愛い。
なかなか名前で呼ぶ事を定着させてくれないから、時々わざと聴こえないふりをすることにした。
家に要る時なら、小言を言いながらも刹那はそれに応えてくれる。
由唯はリビングのラグマットから立ち上がり、キッチンに立つ刹那の隣に並んだ。
ちりんと鈴音を立てながら、セツも足元に寄って来る。ガラスボールを覗き込むと、カルボナーラで使用した卵黄の余りが残っている。
『―――何に使えるの?お菓子なら嬉しい』
「うーんと……」
顎に人差し指を立て、暫く考え込むと ケーキや、クッキーとか?と次々にレシピが溢れた。
「ケーキは前に作ったし……ラング・ド・シャなら 使う材料も少ないかな?」
『ラング・ド・シャ?あぁ、あのサクサクしたクッキー?』
フランス語で”猫の舌”という意味で、ジャムとかクリームを付けても美味しいんだよ。と、刹那はちらりと舌を出して見せた。
『―――……それいい。それ食べたい』
「じゃぁ」と、エプロンを翻して冷蔵庫を空ける刹那。
無防備で可愛い黒猫(刹那)の仕草に、キスしたくなった衝動を抑えきった自分を褒めてやりたい。
「―――無塩バターが無い」
『―――?』
この前のパウンドケーキで使い切っちゃったんだね…どうしよう。
顎に手を当て、考え込む。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時