嵐の訪れ 【由唯side】 ページ34
＊
夏休みも終わりに近づく 休日の朝――
ピンポーン・・・・・・
眠気眼を擦りながら見ると、インターホン画面には、気まずそうに下を向く姉が映っていた。
携帯画面には、10分ほど前に“今から部屋に行きます”と連絡が入っていたようだが、家族からの連絡は消音設定にしている為気が付かなかった。
また、母が果物でも持ってきたのだろうか。流石に連日の贈り物攻撃には嫌気がさしている。
今日は受け取らないと言い返してやろう…そう思い、玄関ドアを開けると―――
「お久しぶりね、由唯さん」
『――――………』
姉の代わりに玄関前に立っていたその人に、由唯は思わず開けた玄関ドアをそのまま閉めた。
これから始まる波乱の幕開け――――嵐は、すぐそこまで訪れていたのだ。
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玄関ドアを一枚隔てれば、中はハイクラスの防音室。
玄関ドアを叩こうが、外から叫ぼうが、中は水を打ったように静かだが、次々と携帯電話に入るメッセージに嫌気がさし、由唯は諦めて玄関を開けた。
次々と送られてくるメッセージは、姉・初夏の携帯電話から―――
(こいつ、自分のアドレスが着信拒否されている事知っていて、初夏の携帯電話を使いやがったな)
大事な用事があるからと、なぜかスーツに着替えさせられ、渋々と母の秘書が運転する車に乗せられる。セツの事は姉に任せ、由唯は後部座席で窓に頬杖を突きながら、車窓から流れる外を見ていた。
「由唯さん―――バイクのレースで優秀な戦績を納めているようね。先日圭吾さんの会社に挨拶に伺った時に聞いたわ」
『―――……』
「一つの分野でトップを極めた圭吾さんの事、わたくしはとても尊敬しています。でも、由唯さんの事が心配だという母の気持ちも、分かって下さいね」
(―――何が母だ…自分の事ばかりで 俺の気持ちなんて、分かっていないくせに)
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月3日 23時
