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すっかり集中力の途切れたテーブルに、女子達が切り分けてくれた果物が並ぶ。
由唯と、一触即発なオーラを交わしていた友人も、隣で雑談を交わしていた。こういう、後腐れがない関係が心地いい。
お腹を満たした後は、残りの追い込みにかかる―――せっかく指導者がいるのだ、今日中に課題の終わる目途を立てて置きたいのは、皆同じだった。
夕暮れには、全員が大体の課題を終えていた。
「やっぱり、集中してできる環境があると違うなぁ」
「半分遊んでたくせに、よく言うわ?」
雑談を交わしながら、玄関を出ていくクラスメイト達に続き、刹那も靴を履いて追いかける。
由唯は彼女の耳元に、こっそりと言葉をかけた。
『―――せっちゃん……』
「……?」
『よそ見せず、まっすぐ帰ってね?』
「―――ほえ?」
じゃぁねと手を振り、クラスメイトを見送る由唯。
寝室へと戻ると、セツが鈴を鳴らして足もとに擦り寄って来る。
『待たせてごめんね―――セツ』
移動させておいたセツ用のクッションの上には、チュールと、いくつかのおもちゃが置かれている。刹那が折を見て様子を見に来てくれていたようだ。
『せっちゃんが来てくれたんだね―――よかったね、セツ』
「みぅ―――」
『俺、刹那を誰にも渡す気はないから―――セツも、応援してくれる?』
コロコロと喉を鳴らし擦り寄るセツの首元を撫でる。
ちりん…と、涼し気な鈴の音が、静まり返った家に響いた。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時