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「バイクモデルやってたんだね!このカフェどこ?おいしそー」
「こんな特技あるなんて意外!凄いじゃん!」
「かっけー!お前、バイクに乗ってる時は顔つき変わるよな!」
次々と掛けられる言葉に、由唯は刹那の隣に行くタイミングを失う。
(あーもう…。せっちゃんと話がしたかったのに―――)
ちらりと後ろを見ると、ローテーブルで男友達と話をする刹那。
時々笑顔を見せている姿に、胸がざわつく。
―――なんだろ、これ。アイツと話している姿に、イライラする。
そんな可愛い顔見せるのは、俺だけにして欲しいのに―――
……これじゃ ヤキモチじゃん。
「綿貫、今度さ――― 『せっちゃん!』」
男友達の声を割る様に、由唯は刹那に声をかけた。
突然の由唯からの声に、彼女は驚いたように緑の瞳を見開く。
『―――悪い。野菜室に実家からもらった果物あるんだけど―――切り分けてくれない?』
「えっ―――あ、うん。いーよ」
刹那はすっと席を立ち、キッチンへと向かう。「私も手伝うよ〜」と、女友達が彼女を追いかけた。
「果物?」
残された友人は、不服そうに由唯を睨む。が、不服なのは、こちらも同じ―――
『最近やたらと送って来るんだ…一人じゃ食べきれないし、せっかくだから皆にも手伝ってもらいたくて』
「―――へぇ」
彼はまだ何か言いたげな雰囲気を残すが、キッチンからの「美味しそう〜」「え、これ切っていいの?!」という楽しげな声にはぐらかされる。
“何か”を言いたかったのは、由唯も同じだ。ここで言い負ける気はない。
夏祭りであれほど牽制しておいたのに……。
「由唯―――お前さ……」
『言いたいことがあるなら、聴くけど?』
険悪な視線を交わす由唯と友人の間を、空気を読んだ男友達が割って入る。
「はいはい―――オマエ等ねぇ」
「糖分足りてねーんだろ?!果物貰おうぜ!!」
こんなところで本気で言い合う気はなかった。友人も、そのつもりだったようで―――
「わーってるよ」と頭を掻いた。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時