いざ、林間学校へ【刹那side】後編 ページ25
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お風呂は銭湯のような露天風呂でゆっくり浸かり、皆 登山の疲労を洗い流していた。
10時。
消灯の時間に見回りに来た先生が各々の部屋の電気を消していく。
部屋の定員は4名で左右に2段ベッドがワンセットずつ組み敷かれている。
上に登りたい友人の気を汲み取って自分は下のベッドに収まった。
ふかふかしたお布団にウチの睡魔が稼働し始める。
「──ねえ、こんな話 知ってる？」
唐突に上の段から零れてきた友人の声に、ウチは眠い目を擦りながら『なーに？』と耳を傾けることにした。
「ある秋の頃、仲のいい男女が宿泊に来ていて
遅めの時間に露天風呂へ入ったんだって
そこには既に先客がいて湯煙の向こうで影がうっすらと映っていたんだ。
「いい湯だね」
声色的に子どものようだ。
何気なく打った相槌は湯気に飲み込まれた。
水面に浮かぶ鬼灯の赤い実が提灯のように仄かに光を放ち、相反するように青白い花が寄り添い漂う。
その様は幻想的で思わず目を奪われた。
「……綺麗」
「うん、綺麗だ──でも」
呟いた言葉を拾うように子どもの声が耳に届く。遠くで雷鳴が轟いた気がした。
「この美しさが、＿＿＿を殺したんだよね？──お母ちゃん」
「──え」
振り返ると、子どもの影は無く鬼灯の赤と白も消えていた。
───後日に聞いた話
その日は、2人以外は誰も泊まっていなかったそうだよ」
────お終い。
『──え、ホラーなの？』
唐突な結末にウチは衝撃を受けていた。
あの子どもは何者だったのか。その宿泊施設では何があったのか。
問いかけても上からの応答は無い。
そろりと覗き込むと友人はもう既に眠りの中にいた。
頭が緊張状態になった時、目は比例するように冴えてしまうもの。
人間の生体の不思議に嘆きながら、ウチはもう一度 上の段を覗き込み小さく声をかけた。
当たり前だが寝息しか返ってこない。
あまり騒いで周りのクラスメイトを起こしてしまっても忍びない。
しかし、ベッドの中に戻ってもさっき聞いた話が頭から離れない。
ウチは気晴らしに部屋の外に出ることにした。
一応ということで再度友人に声をかけると、転がってきたストラップ型の防犯ブザー。
ウチは『ちょっと借りるね』と呟き、それをポケットにしまった。お守り、的な。
何気なく歩いてたどり着いたのは自販機のある共有スペース。
自動販売機に垂直に面している大きめの窓。その前には広いテーブルがあり、それを囲うように長いソファが2つ設置されていた。
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作者名：しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ：なし
作成日時：2021年8月3日 23時
