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『それ重いよ?!』
「うん、さっきのせっちゃん見てたら充分分かった」
力仕事は男の仕事でしょ?任せて。
洗い終わった米の入ったボールを由唯くんが代わりに持って運んでくれた。
どうやら、さっきの自分を見られていたらしい。
不甲斐ないなぁ。
ごめんね?と謝ると、「そこは“ありがとう”の方が嬉しいな」と直されどもりながらお礼を言った。
「どーいたしまして」
ニカッと歯を見せる笑みは貴重で、ウチはまたときめいてしまった。
水を目盛りまで入れ蓋をする。
「後はスイッチ入れればいいね」
とワクワクした飴色には申し訳ないが、『ちょっと待って』と手で制する。
『お米は少し水につけておくとふっくらしてより美味しくなるよ』
「そうなの?」
『うん』
時間的に……15分くらいかな。
手首を返して腕時計を確認する。
覗き込んできた由唯くんに『この時間になったらつけていいよ』と指示した。
スイッチ押したそうだったから、ね。
由唯くんは「分かった」と言うと、自分の腕時計で何かを設定していた。
今度はウチが覗き込むと由唯くんは見せてくれるよう屈んでくれてる。
『あ、タイマー』
「そ。15分後に鳴るよう設定したんだ」
これで忘れたりしないよ。
得意げにウインクする由唯くんにウチは小さく凄い、と言葉をこぼした。
「───刹那ー!」
『あ、はーい!』
後ろで友人が呼んでいる。
行っておいで、と手を振る由唯くんのご厚意に甘え名残惜しいけど この場を去ることに。
あ……、ふと振り返るとまだこちらを見ていた由唯くんと目が合う。
ウチは己の口元に手を添え大きく息を吸った。
『スイッチを押す役目、七瀬くんに任せた!』
「──任された!」
自然とおたがいがニッと笑う。
ウチは手を振ってから友人の方へ。
なんかいいな。こういう感じ。
夕食のご飯は、今までで一番美味しかった。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時