ゆいのゆめ 1/3 【由唯side】 ページ3
*
気が付けば、深い森を早馬に乗って駆け抜けていた。
ここが、夢だという事くらい、直ぐにわかる――
大体、由唯は乗馬などしたことがない。
風を切るすがすがしさと、地面から伝わる振動はバイクの上で立ち乗りしている時に、感覚は近い―――
どこに向かっているのかも分からない。
ただ、真っすぐに馬を走らせていると視界の先に大きな城が見えた。
童話か―――何かのRPGゲームにでも出てきそうな城だな。
重ねて言うが―――由唯はゲームもしたことはない。そんな時間があるのなら、バイクに乗っている。
きっとこれは、俺の脳(イメージ)が作り出した城だろうが……
―――我ながら、随分とメルヘンな頭をしているな。
17歳にもなってこの思考は、色んな意味でヤバい。
いやにリアルに感じる自分の思考に苦笑いを浮かべ、大きな扉の前で馬を降りた。
扉の前には、薄茶色の髪をした―――少女?
『―――……』
いつの間にか腰に据えられた剣に右手を添え、警戒する。
すると、茶色の髪をした少女は扉に持たれかかっていた背を離し、由唯の前まで歩いてきた。
「遅いですよ―――?パパ」
『パパぁ?!』
己の声とは思えないような、情けのない声が喉から零れる。
大体 俺に子供なんて―――
目の前の少女を流し見る。背格好は刹那の弟…結と似ている。だとすれば、年は6歳くらいだろうか―――
(11歳の時の子供とか―――あり得ないだろ)
あり得なくてもおかしくはない…ここは、夢の中なのだから。
おかしいのは、俺の頭か―――。
由唯は軽く頭痛を覚えた。夢の中でも、頭痛はあるらしい……
下を向いていた少女が顔を上げ、その瞳に心臓が不整を奏でた。
薄茶色い長髪に、吸い込まれそうになる若葉色の瞳―――
『―――もしかして、セツ?』
眉を顰めながら、恐る恐ると尋ねると、少女は満面の笑みを浮かべた。
「気が付くのが、遅いです!パパ―――」
そして、くるりと白いワンピースを翻し、由唯の右腕を両手で掴んだ。
「早く、助けに行きますよ―――?」
『助けに行くって……何を?』
「決まっています―――刹那ママを、です!」
(マジか―――?!)
・
・
・
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時