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黒いふわふわとした髪を揺らし、片手にはエコバック。
シンプルな服装で飾らない彼女は、いつだって刹那らしくて可愛い。

今年のバイクイベントのバイトは、刹那に会えるだけでいつもになく楽しい。
セツを口実に家に呼び、彼女が参加すると聞くだけで、今まで参加しなかった夏祭りや海水浴なんかのグループデートにも進んで参加している。

―――いるじゃん。バイクより、夢中になれる人…

『せっちゃん―――次の夏祭り、一緒に行こう?』




戸惑っていた刹那を半ば強引に誘い、週末の夏祭りデートを取り付ける。
グループアプリでは数名が夏祭りに一緒に行こうと騒いでいたが、由唯は刹那に“二人で行きたい”と念を押していた。

待ち合わせは行わず、刹那の家(孤児院)まで迎えに行くと、まだ準備が出来ていないという。
「ごめんなさいね」と苦笑いを浮かべた刹那の母に、『大丈夫です』と伝え、実家から山ほど送られたスイカを結達と一緒に食べていた。

(待つのも、じらされるのも嫌いじゃない―――それが、刹那なら)

「うわ!お姉ちゃん かわいー」

背後で結が興奮した声を上げる。
刹那の着付けが終わったのかと、結の声につられて振り向いた由唯は言葉を止めた。

青と緑を基調としたシンプルな浴衣は、この前の夏祭りで見ていたはずなのに―――どこか雰囲気が、違って見える。

『あれ―――せっちゃん浴衣変えた?』
「ううん。帯を、変えたの―――」

背中で結ばれたリボンを気にするように振り向く刹那。
そう言えば、前は黄色の帯をしていたっけ…
今は、赤とピンクのリバーシブルの帯を結んでいる。

『へぇ―――何かイメージ違う。……あ』

浴衣姿に目を奪われていたが、刹那の髪留めを見て緩む口元を片手で隠した。
赤いリボンがふわりと揺れる。それは、由唯が彼女に送った髪留めで、刹那の黒髪によく映えて―――可愛い。

『せっちゃん、可愛い―――』
「ほんとだー!お姉ちゃんかわいい〜」
「ゆかた、かわいいー」

隣にいた子供達も、こぞって刹那の浴衣姿を褒めている。照れくさそうに頬を掻く刹那…
この様子だと、俺の“可愛い”の言葉は流されてしまったな―――。
まぁ、刹那が大切にする彼らには敵わない、か。

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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月3日 23時

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