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“ほんとだ、可愛いね──”
送信ボタンを押そうとした手が止まる。

───これってチャンスじゃない?

ウチはすぐにメッセージを付け足した。

“───七瀬くんはどの色が好き?3つ教えてくれたら嬉しいです”

送った後に気づいたけど
これは、直球過ぎたのではないだろうか……。
だが、あまりに回りくどい言い回しはかえって怪しまれてしまうから なるべくなら避けたいし。


等と思考していると、また……ピロン、受信を告げる音が鳴った。

“緑、赤、青かな?──でも、どうしたの?”

後に続いた言葉の返答に迷ったが、
良い言葉が浮かばず

“何となく、聞いてみたかったの。ごめんね?
──おやすみ”
誤魔化すように返し、入眠を告げた。

我ながら一方的過ぎだったかな。
きっと明日も聞かれるだろうなぁ。

でも、その時が渡すチャンス。

ウチは勉強机の椅子を引き腰を下ろした。
色と道具の確認をし作業を始める。

たくさん想いを込めて編み込んだ………。






『ふわぁ…』
「お姉ちゃん 大っきなあくびー」
「お姉ちゃん 眠たそー」
じっと見てくる純粋な目に、ウチは苦笑を浮かべて頭を撫でた。

「「いってきまーす!」」
『いってらっしゃい』
小学生組は夏季休暇の中の登校日、幼稚園組は母と散歩に出かけている。
一息つくとまたあくびを噛み締めた。

「あらあら、昨夜は夜遅くまでご苦労さま」
事情を知っているせんせいは、後片付けをしてくれている。
ウチもバイトの準備をしなきゃ!

部屋に戻り身支度を整える。
朝がけに完成した“それ”をプレゼント用に包装し、トートバッグに入れ部屋を出た。

『いってきます!』
「いってらっしゃい」

受け取ってくれるかな?
気に入ってくれるかな?
迷惑じゃ、ないかな?
ウチの目と似た緑なのは気づいてくれるかな?
────ウチの気持ち 届くかな?

不安が湧き水のように産まれてくるけど、足は急かすように前に進んでいく。

心は落ち着かないのに不安なのに、彼に早く会いたいと心が叫んでいる。

こんな気持ち、初めてだ。

やっぱり由唯くんは凄い。
ウチに、こんな素敵な気持ちを運んでくれるのだから。








「おはよう、せっちゃん」

『お、はよ!……七瀬くん』
いざ彼に会うと緊張が先走って上手く言葉が産まれない。トートバッグを握る手に汗が滲む。

結局、この時は渡せなかった。




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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月3日 23時

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