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『身につけられる、物』
なら邪魔にならないものがいいよね?
筆記用具……は無難すぎか。
なるべくなら、彼にとって特別なものがいい。
少しでも、感謝と──気持ちが届く物を。
彼にとっての特別は………バイク?
ウチは部屋からバイク雑誌を持ち出し2人にも見てもらえるよう テーブルに広げた。
『バイクの小物はどうかな?』
「あら、いろいろあるのねぇ」
「でも、結構値段しますよ?」
“値段”という単語にウチの動きがピキリと止まる。
確かに良い物となるとそれなりになるようだ。
自分の今のお小遣いでは到底手が出せない。
ウチは肩を落とした。
せっかく良い案だと思ったのになぁ。
「──刹那、これ借りてもいいですか?」
雑誌に興味を持ったのか貸し出しを要請してきた母にウチは力なく頷く。
また1から考えなきゃ。でも他に何が欲しいかな?
あげるなら迷惑にならない物がいい。
セツの玩具は……ダメ、お母さんが沢山あげてる。
弟妹たちの好きな物はすぐに思いつくのに、彼のことになるとなかなか思うようにいかない。
不思議だけど、嫌ではなかった。
でもどうしようか……
しばらく考えていると、せんせいが何気なく言葉を落とした。
ミサンガをあげたらどうか、と。
ミサンガ──3色の色を絡めて織った和風なブレスレットのことを指す。
作る際、必ずその人をことを想って作ることから、願掛けの意味合いも込められている。
──それだ!
これなら材料も揃うしウチでも作れる。
気持ちも込められる。
『せんせい!ありがとう!』
ウチはいてもたってもいられず足早に部屋へと篭った。
勉強机の電気をつけ、その灯りを頼りに棚から裁縫道具を引っ張り出す。
勉強机に糸を並べ眺める。
うん、大体の色は揃ってる!
後は彼の──由唯くんの好きな色は聞くだけ。
メッセージアプリで聞こうか?……いや、もう夜も遅いしきっと彼も寝ているだろうと頭を振る。
──ピロン。
枕元にあった携帯電話からメッセージアプリの受信音が鳴る。
開いて目にした名前にウチは目を見開いた。
『由唯、くん』
ちょうど考えていた人からのメッセージにとくん、と鼓動が速まり手が震えた。
恐る恐る開いてみると、
“セツが可愛すぎる”
のメッセージとともに、ヘソ天姿のセツの画像が添付されていた。
『くすっ、確かに可愛い』
緊張が嘘のように解れていく。やっぱり由唯くんはすごいなぁ。
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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2021年8月3日 23時