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お返しの色【刹那side】 ページ11



───夜、リビングにて

ウチは今日乾いた洗濯物を畳み、一人一人のボックスに分けていた。
夏は洗濯物もすぐ乾くから本当にありがたいね。
その分 洗い物も増えるけど。

扉が開く音。
弟妹達を寝かせてきたせんせいが戻ってきたのだ。

「──あら、刹那ちゃん。その髪飾り、可愛いわねぇ」
最近つけてるけど、好きなの?

『うん、凄く──好き』
赤いリボンのついた髪飾りが左耳の上で揺れる。
最近できたお気に入りで家では肌身離さず着けている宝物だ。

「誰かからのプレゼント、かしら?」
せんせいの深まった笑みが訴えかけている。
あ、これ誰か分かってて訊いてきてるヤツだ。

ウチは小さく『由唯くん』と答えた。
なんだかむず痒くて頬が痒くなってくる。
まあ!と口に手のひらを当てて上品に驚くせんせいはあまりにも自然すぎて本当に驚いているように見てしまう。
……絶対わかってたよね、せんせい。

「そういえば、セツの首にも似たような首輪が着いていましたね?」
ホットワインを片手に現れた母はダイニングの椅子に腰掛け、思いだすように頬に指を添えた。

「セツ?──あ。あの仔猫ちゃんのことね」
セツちゃん、ふふっとっても可愛い名前だわ。

「誰かさんと同じ、ですね」
「ええ」
ふふふ、と微笑み合う2人は何やら通じている様子。
一人置いてけぼりなウチは頬を膨らませ睨むように訴えた。

「この子がここまで鈍感だとは思いませんでした」
「大丈夫よ。2人はこれからだもの」
片や 頬に手を添え困ったように深い息を吐き、片や のほほんと笑い湯のみの白湯を口に仰いだ。

2人はなんのことを言っているのだろう?
分からず首を傾げると、母は「……これがこの子の可愛い所なのよね」と噛み締めるように呟いた。
「あ!」
今度は何か閃いたのか短い声を上げる。
大きな声はみんなが起きるからあまり出さないでほしいんだけど…。

子どものように輝かせた目で見つめられたウチは、出かけた注意の言葉を飲み込むしかなかった。

「ヘアアクセサリーのお返しはしましたか?」
『おか、えし……』
ウチはハッと我に返る。
そういえば……こんな素敵なものを貰ってお返しが何も出来ていないのではないか?

でも……

『お返しって一体何をあげればいいのかな……』
「それは決まっています!刹那自し「何か身につけられる物はどうかしら?」むう?!」
いつの間にか背後に回っていたせんせいは何か言いかけた母の口を両手で塞いだ。笑顔で。


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作者名:しゃっぽ、kohaku x他1人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2021年8月3日 23時

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