俺は生きているのか ページ3
＊
『……』
窓の外の雪を俺は眺めていた。
音も無くしんしんと降り注ぐその光景は幻想的で惹き込まれそう。
いつまで降るのだろうか。
そうぼんやり思考を飛ばしていると
「居たぁ！！」
下から声が。
円錐状に立てられたこの建物は中央が空洞で声が反響しやすい。
故によく響くのだ。
走行しているうちに声の主がだんだんとこちらへ走り近づいてくるのが目に映る。
ご丁寧に動くなと叫びながら。
“
俺は特に反抗することなくその場で“彼”が来るのを待った。
彼は俺の目の前で止めると、乱れた息を整えつつ くわっと目をひんむく。
「お前ぇ！“また”脱走したな！？」
『……脱走ではない。散歩だ』
「同じことだろぉ！？」
お前は怪我してんだ！
絶・対・安・静・なんだぞ！
チラリと俺の頬に貼られたガーゼに目を向け眉間にシワを寄せる。
和らげようと人差し指で彼の額をつつくと
やめろぉ！と騒がれた。
「……オレの上に乗れ。送ってく」
言いながら彼はこちらに背を向け“トナカイ”へと変化した。
いや、これは変化ではない。
彼は元々がトナカイなのだ。
口寄せで呼ばれた者でも無いのに言葉を解し二足歩行ができるのは、彼が“ヒトヒトの実”という摩訶不思議な“悪魔の実”なる物を食べたからだという。
『……すまない』
「そう思うなら脱走しないでくれよ……」
毎度毎度探すの大変なんだぞ？
お前隠れるのみょーに上手いし。
……褒められたか？
いや、褒めてぬぇーし！？
彼の背に揺られながら上を仰ぐと、天窓から見えた雪がしんしんと絶えることなく落ちていた。
＊
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