九十三 ページ32
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(相変わらず思わせぶりなことばかり。ずるいじゃん)
申し訳なさそうに笑う男に、少し怒りを覚えつつも、
(結局、先生と生徒。それまでなんだ)
そう腑に落ちたような、うまくいかないことの言い訳にした。
手にあるカフェオレはもう冷え切ってしまっていた。
「あっそう言えば」
ジャケットの胸元に閉まっていたそれを手渡す。
「写真です。渡し忘れてましたから」
坂本はそれを受け取り、目を丸くし
「よう覚えちょったのう。冗談半分やったちうに」
「欲しいって言ってましたから」
「気が利くのう。有り難く受け取るぜよ」
綺麗な夕焼けを背に映る勇ましい船体が坂本の手に渡る。
ただの親切心。
そんな安っぽい感情で男に渡した訳ではない。
これはAなりの、Aとしての痕跡だった。
(私にだって、先生に痕残させてよ)
幼いながらに考えた坂本の周りにいる女達へのマーキングだ。
それに付随して、
(写真を見て、思い出して欲しい)
という淡い期待。
坂本への気持ちが溢れていた。
「いい写真じゃのう」
我ながら、恥ずかしいことをしたと自負していた。
写真を見、嬉しそうにする坂本が見ていられず、マグカップに手を伸ばす。
もう、中身なんて入っていなかった。
(これで、おしまいだ)
胸がざわざわと騒ぎ立てる。
(最後だから、ってそのままでいいのか)
そうAの中の邪心が言っている。
理性は駄目だと言っているのに、勝手に身体は動いていて、
「先生」
「ん？」
「最後に私と写真撮ってくれませんか」
携帯電話を片手にそう言っていた。
「おう。構わんぜよ！しっかり笑うぜよー！」
生徒の最後の可愛いお願いだと坂本は笑っている。
カメラ画面を起動し、設置しやすい本棚に置く。
普段、坂本が教えるのに使っていたホワイトボードを背にして坂本は立っていた。
タイマーを押して、坂本の方へと向かう。
「急げ急げ」
坂本の隣に立ち、真っ直ぐ前を見つめる。
少しだけ当たる腕がもどかしい。
「もうすぐじゃあ！しっかり笑えー！」
チカチカと点滅する機体。
(もう最後だ)
前を見ていた視線を坂本に向け、背伸びをして、
「ピー…ス…？！」
頬に唇を落とした。
時が止まったような気がした。
(ずっと好きでした。ばいばい、坂本先生)
何かがすっと落ちていくようなそんな感覚だった。
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るう - 坂本ざああああああああん”〜！ 最高！！😭 (2022年12月25日 20時) (
レス) @page11 id: ee892c350f (このIDを非表示/違反報告)
Nattu(プロフ) - ぼむぼんさん» わー！ありがとうございます！かわらず楽しくかいていきます！ (2021年9月16日 12時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
ぼむぼん(プロフ) - 続編おめでとうございます！！無理せず頑張ってくださいね！！ (2021年9月16日 0時) (レス) id: cd33b2bf6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Nattu | 作成日時：2021年9月15日 23時
