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ヌナが、あのヌナが何も言わずにいなくなってしまうということはきっと、
もう、ヌナから僕らのところには来てくれないだろう。
それが僕にはなんとなくわかってしまったんだ。
それはきっと、95年のヒョンたちも、ウォヌとウジも一緒だろう。
ホシもきっとわかってる、ヌナがどれだけ情が深い人だったか、この場所を大切にしていたか。
だからこそ、きっと、ヌナから何も言わずに離れたと言うことは、もうこの場所にも、僕らにも、未練がないってことなんだ。
ねぇホシ、弟たちに期待を持たせることを言うのは可哀想だよ。
そう言いたいのに、僕の口からはただ、嗚咽が溢れるだけだった。
瞬きするたびに頬からこぼれ落ちていく涙を拭うこともせず、何も言えないまま空を見つめる。
…本当は僕も信じたいんだ、ヌナが帰ってくるはずだって。だってヌナは、ずっと一緒にいてくれるって言ったんだ。
ヌナは嘘をつくような人じゃない、だからきっと、戻ってくる。僕らのそばに、ずっといてくれる。
ねぇ、そうだよね?ヌナ。
早く帰ってきて、僕らの涙を拭いてよ。
泣き虫だなぁって、あの優しい笑顔を見せてよ。
そう願っても、やっぱり僕らには誰の手も差し伸べられなくて、
ただただ床にポロポロと涙の粒が溢れるのをどこか他人事のように見つめていた。
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作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時