. ページ7
.
さっきまでの幸福感があっという間に崩れ去って、僕たちは不安と焦燥感に駆られながら代表の部屋へと走った。
先頭のスンチョリヒョンが、どんどん、と雑なノックをして、ドアの向こうからの返事も待たずにドアノブを捻った。
「…おまえら、なんでここにいるんだ。
それとノックしたら返事を待ってから、」
「…Aは、!
Aはどこにいるんですか、代表!」
代表の言葉をさえぎったヒョンの声は、弱く震えていた。
ドッキリでもしてるんだ、きっとそうだ。だってヌナが、僕らの前からいなくなるわけない。
「…何かと思えば、」
「早く…!答えてください、!」
上擦ったような、スニョンイヒョンの声。
もしかして、後ろのカーテンにでも隠れているのかな。
ちょっといたずらしちゃった、なんて笑うヌナを揶揄いながら許す準備はもうできたから、
だからはやく、
「…Aなら昨日退所した。話は終わりだ。」
そんなこと、あるわけがないじゃないか。
「っ、!待ってください、!まだ話は…!」
「これ以上お前たちに話せることはない。これからもスケジュールが詰まってるんだ、貴重なオフくらい大人しくしてろ」
追いやられるように、代表室から無理やり出された僕たち。
「…そうだ、携帯、!
ヌナに連絡、!」
静まり返って、つい数十分前の幸せが嘘みたいに消えた僕たちの中で、ミンギュヒョンが閃いた、と言わんばかりに呟くと、震えた手でポケットから携帯を取り出した。
ヌナの電話番号を選択して通話ボタンを押せば、すぐに繋がるはずだ。
ヌナに何かあったのかもしれない、僕らを置いていくなんて、よっぽどのことだ。
早くどこにいるのか聞いて、会いに行かないと、
『ーーおかけになった電話番号は、現在使われておりません。番号をお確かめの上、おかけ直しください。』
でも、僕ら13人の中心から聞こえたのは、ヌナの柔らかい、優しい声なんかじゃなく、ひどく冷たく機械的なアナウンスだった。
ミンギュヒョンの手から、携帯が滑り落ちる。
カタン、と音を立てて床に転がったそれを、拾う人は誰もいなかった。
僕らは、一番幸せになるはずだった日に、一番幸せにしたい人を失った。
1357人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時