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陶器のような、桃色の頬に手を伸ばす。
その指に触れた感触は、確かなもので、
ああ、大丈夫だ。夢じゃない。
なんて1人心の奥で安心した。
「…ずっとどこで、なにしてたの、
…なんで、俺たちの、
…俺の前から、いなくなったの」
Aの頬を撫でて、絞り出したのはそんな言葉だった。
6年間の間、ずっと聞けずにいたその問いを、漸くAに投げかけることができた。
Aは頬をすべる俺の手のひらに自分の手を重ねると、俺の目をまっすぐ見つめて、6年越しの問いに答えた。
「ジョンハンくんたちに何も言わずにいなくなったこと、ごめんね。
…私はあそこを去るしかなかった、私の意思じゃなかったの」
言い終わると、静かに目を伏せたA。
まぶたに倣って伏せられた柔らかくて長いまつ毛が、Aの白い肌に影を落とした。
そしてゆっくりと俺を見上げたその瞳には透明な膜が張っていて、照明を反射してきらきらと輝くその眼差しに吸い込まれるようにAの唇に自分のものを重ねた。
「んっ、…」
また俺の腕の中に捕らえたAの身体が小さく震える。
くらくらしそうな甘い香りと、柔らかな唇の感触を味わうように、少しずつ口付けを深めればAの手は縋るように俺の背中を這った。
そのままベッドにAを押し倒せば、その瞳は濡れたまま、物欲しそうに俺を見つめていて、背中がぞくりと震えた。
もう何もかも忘れて、もう一度Aの唇に噛み付いた。
ベッドから、昼間に来た時は感じなかった、男物の香水の香りがした気がした。
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作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時