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でも、僕のヌナは、僕だけのヌナではなかった。
みんなに厳しいスニョンイヒョンも、いつもポジティブなミンギュヒョンも、みんなヌナの前ではその優しさに身を任せて弱ささえ曝け出してしまう。
いつからか、ヌナに抱いていた気持ちが尊敬や憧れから、恋慕に変わったのを自覚した。
そして自覚してしまえば、周りのヒョンたちの気持ちにまで気づいてしまって、余計に辛かった。
それでもヌナは相変わらず、みんなに分け隔てなく優しくて、本当に、女神さまのようだった。
みんなもきっとわかっていた、ヌナが誰かの特別になって仕舞えば、自分を見てくれなくなるかもしれない、ヌナに自分が選ばれなかったら、この先やっていける自信がなかったんだ。
だから、みんなヌナへの気持ちに必死に蓋をして、普通に接するように努めた。
僕らの関係が壊れなければ、ヌナはずっと一緒にいてくれるって、信じてやまなかったんだ。
でもそれが幻想だったと気づいたのは、皮肉にも僕らの記念すべきデビューの日だった。
デビューショーケースを無事に終え、宿舎で小さなパソコンの画面に集まっていた僕ら。
YouTubeに公開されたミュージックビデオを、スンチョリヒョンが緊張の面持ちでクリックして、画面には僕らのデビュー曲が流れた。
13人でぎゅうぎゅうになりながら、小さな画面に映る僕たちの姿を見て、言葉に表せないくらいの喜びを感じたのを今でも覚えてる。
そして、誰からともなく、ヌナに会いに行こう!そう言い始めた。
僕らがデビューできたのは、本当に、ヌナのおかげと言っても過言ではない。僕が知らないところでもずっと、みんなを支えてくれたヌナに、ありがとうを言って、目いっぱいお祝いしてもらうんだ。
僕らの心は期待と、喜びと、ヌナに会える嬉しさに溢れていて、事務所までの道をみんなで笑い合いながら駆け抜けた。
きっと今、世界で一番幸せで、ヌナも一緒にその輪に入って喜んでくれると、信じて疑わなかった。
このあとに、何が起こるかなんて、知りもせずに。
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作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時