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「うわぁ、イマーク、尊敬するわ…」
なんて思ってもいないだろうヘチャンの声に、そちらを睨む。
「6年半か、めちゃくちゃ長いね…」
「どこで練習生してたんだろ、うちじゃないだろうし…」
ジェノやチョンロの独り言も、頭を通り抜けてしまうくらい、俺の頭の中はぐちゃぐちゃに混乱していた。
その中でも
「…やっぱりそうだったか、」
なんてロンジュンの呟きが、やけに耳に入ってきた。
絶対に、聞くべきじゃないことだった。その可能性だって、視野に入れておくべきだったのに、俺の悪いくせだ。気になる、どうしてだろう、知りたい。そんな気持ちが先走って後先考えずになんでも聞いてしまう、悪い癖。
「あ、マクヒョン、!」
気がつくと俺は走り出していた。
結局またいつもと同じ。だって今も、何も考えずに走ってるんだ。ヌナに謝りたくて、ただその一心で、足を前へ前へと進めた。
「…っ、あの!Aヌナいませんか、!」
たどり着いたオフィスフロア。いつもヌナの使っているデスクに望んでいた姿は無くて、隣の席のヒョンに声をかける。
「あぁ、Aさんならカフェに行くって言ってたよ、もう直ぐ戻ってくるんじゃ…あ、!」
その言葉を聞くや否や、ヒョンが最後まで言い終えるのを待たずにまた走り出した。
「っはぁ…、!」
エレベーターホールで、ボタンを押してから息を整える。
すれ違ったりしてないよな、変なところで間や運が悪いのはちょっと自覚しているから怖い。
ポーン、と電子音がしてエレベーターが開く。
「…あ、」
「っ、!ヌナ、!」
開いたドアの先には、コーヒーを持ったヌナがいて、俺を見るや否や、
「乗って下さい」
そう呟いた。
「…え、あの、」
なんてヌナの言葉の意味がよく噛み砕けずにもごもごしていると、
「…置いていきますよ?」
なんて言われたから急いでエレベーターに飛び乗った。
どこにいくんだろうとフロアのボタンを見てみると、『R』の文字が点灯していた。どうやら行き先は屋上らしい。
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作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時