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「んっ、…」
Aの唇から漏れた吐息にはっとして、身体を離す。
Aの瞳はまっすぐこちらを見つめていて、
「あ…ごめん、!なにしてんだ、俺…」
やっと自分のしでかしたことを理解してベッドから立ち上がろうとした。
…けど、それはAの手によって阻まれた。
ベッドに置いていた俺の手に、自分の手を重ねたAは、またその俺を誘うような、試すような瞳で見つめながら言った。
「…もっとして、」
「え、」
なんて、情けない声を出す俺に、Aは俺の手を取ったままベッドに倒れ込んだ。
Aの上に、馬乗りになったような状態で固まっている俺の頬に、Aはゆっくり手を伸ばすと、
「…スンチョルくん、わたしに触れて、
わたしをあいして」
そう囁いた。
その時にきっと、俺はおかしくなってしまった。
聞きたいことは山ほどあったはずなのに、そんなの全て放り投げて、
Aに触れたい、それだけしか考えられなくなってしまった。
ゆっくりと、もう一度口付けを落とすと、Aの腕が俺の首元に回る。
「っ、スンチョルくん、」
Aが俺の名前を呼んでくれるなら、俺の元にいてくれるなら、もうどうでもいい。今までどこにいたかも、何をしてるかも。
だってこの腕の中にいま、Aはいるんだから。
カーテンの隙間から薄明かりの入り込む部屋の中で、ぽっかりと空いていた時間を埋めるみたいに、俺はAの感触を貪るように確かめた。
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作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時