インタビュー ページ3
.
side S.COUPS
出版された雑誌を確認してみると、あの質問はカットされていた。
なんとなくそんな気はしていたけど、あれが世に出て、もしAが会いに来てくれたら、なんて淡い期待は持たせても貰えないらしい。
「なにみてんの?
あ〜、この前のインタビュー記事?」
「…感謝を伝えたい人ってきかれて、」
「Aってこたえたわけ?」
「…名前は出してないよ」
「…もう踏ん切りつけたはずだろ、おれたち」
そう呟くジョンハン。
さも吹っ切れたような言い方だけど、
知ってるんだぞ、俺は。お前の部屋に、Aが使っていた香水が置いてあること。
寝る前に時々、それをベッドにかけていることも。
でもそれを言ったらきっと、ジョンハンはその香水を捨てるんだろう。
だから言わないでおく。
ジョンハンにも、心の拠り所は必要だ。
「でも俺は、やっぱり忘れられないよ」
そう返せば、ジョンハンは何も言わずに俺の肩をぽん、と叩いた。
俺はまた、雑誌に視線を落とした。
インタビューの最後の質問は、
好きな女性のタイプを聞いたものだった。
『年上で包容力のあるひと』
なんて、メンバーの殆どが同じような答えをしていたらしくて、未練たらたらな俺たちに思わず呆れて笑みが溢れる。
君は、こんな俺たちを見てどう思うんだろう。
女々しいと嫌がるのかな、
それともやっぱり、笑って受け入れてくれるのかな。
『スンチョルくん』
目を閉じればいつだって鮮明に思い出せるのに、
君はもう、ここにはいない。
1357人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時