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「…あ、うん、そうだよな、ごめん、」
なんて、情けない声。
こちらを見つめるAの視線に、手を離さないといけないことくらい、わかっているのに、どうしても離し難い。
今この手を離したら、またAがどこかへ行ってしまうんじゃないか。
なんて考えが頭から離れなくて、
離さなくちゃいけないのに、その小さくて華奢な手を見つめることしかできない。
どこに行ったって人の目はある。最近はありがたいことに名前もだいぶ知れてきた。
こんな時にもし誰かに見られて誤解されたら？
メンバーももちろんだけど、Aに迷惑がかかってしまう。
頭ではわかっているのに、どうしてもその手を離せない俺に、Aは優しく微笑むと俺の手を握り返した。
突然のことに驚いていると、
「行こう、スンチョルくん」
と、握った手はそのままに歩き出す。
周りの人たちがAが俺の手を取って歩き出したのを見て、安堵の表情でそれぞれ自らの生活に戻っていく。
そんななか俺だけが困惑したままで、
「A、どこいくんだよ、」
「…私のお家、ここから近いの。
そこならゆっくり話せるでしょ、？」
なんてこちらを振り返って俺を見つめるAに、心臓がどくりと跳ねる。
その言葉の意味を理解するまでに、随分と時間を要した気がする。
突然の展開に困惑したまま、Aといられるなら、なんて頷けば、Aはまた花が綻んだように笑ってまた歩き出した。
むくむくと心の奥で顔を出し始めるどうしようもない思いになんとか蓋をして、俺の手を引っ張るAの後ろ姿を見つめた。
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作者名：ゆいか
| 作成日時：2023年11月26日 23時
