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もうひとりの同い年に会いに行くと、案の定まだポロポロと涙をこぼしたまま、ヌナとの思い出と向き合っていた。
「…スングァナ、大丈夫だよ」
そう言ってスングァンの肩を抱けば、顔をくしゃ、と歪ませた後震える声でスングァンが呟く。
「っ、何が大丈夫なんだよ、」
「ヌナへの気持ちも思い出も何も捨てなくていい、閉じ込めなくていい。
ただ自分の中に持っていればいいんだ、ヒョンたちに心配かけないように。
…簡単だろ?」
そう言って顔を覗き込めば、スングァンは涙を拭きながら僕を見つめ返した。
「ボノナも、そうしたの?」
「もちろん、僕にはヌナへの思い出も気持ちも捨てることなんてできないよ。
そんなことしたらきっと、僕は僕じゃなくなると思うから」
そう宥めるようにいえばスングァンは小さく頷いてからもう一度強く涙を拭った。
「っ、そうだよね。
…僕にも無理だもん、ありがとうボノナ」
そう言ったスングァンの瞳は、もう悲しみに暮れてはいなかった。
壊れ物でも触るみたいに優しい手つきでヌナとの思い出をしまうスングァン。
そんな姿を見ながら、きっとみんなこうやってどうにかヌナに区切りをつけるフリをするんだろうな、とひとりごちた。
きっとスンチョリヒョンもホシヒョンもウジヒョンも、それでもいいんだと思う。
みんながきっとこのままだと壊れちゃいそうだから、見せかけだけでもヌナとの思い出や気持ちに区切りをつけさせたんだよね。
僕の勝手な解釈かもしれないけど、そう思うことにするよ。
全てをしまい終えたスングァンの瞳は、なんだか強く見えた。
冒頭の文を訂正しよう。
3年。
それが僕らがヌナを諦めるフリをするまでにかかった時間だった。
でもきっと心の中では誰もヌナを諦めてなんていないよ。
だって僕がそうだもん。
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作者名:ゆいか | 作成日時:2023年11月26日 23時