バーノンとコーヒー ページ47
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バシッ、バシッ、という音と共に焚かれる強い光に、思わず目を瞑りたくなる。
14人での雑誌撮影のスケジュールが開始して1時間が経とうとしていた。全体撮影を終えて、ユニットごとの撮影にうつった今。
目の前ではパフォーマンスチームの5人が白い背景を背にポーズをしていた。
「ボノナ、コーヒー飲む?」
そんな言葉と一緒ににゅっと背後から差し出されたのは、紙コップから湯気を沸き立たせている、黒い液体だった。
「ミンギュヒョン、ありがとう」
俺がそのコップを受け取れば、ヒョンは自分の手に握られているコーヒーをこぼさないように、俺の隣にあったパイプ椅子に慎重に腰掛けた。
「ボノナはさ、どう思う?」
ヒョンはコーヒーにふぅ、と息を吹きかけながらそう尋ねた。
「…何の話?」
質問を質問で返すのはあまり好きじゃないけど、ヒョンの聞き方があまりにも抽象的すぎるから仕方がない。一体何の話をしてるんだ。この撮影の話?これからのスケジュール?おれたちの進退?
「…ヌナのこと、」
ヒョンは珍しく憂いた表情でそう呟いた。
その瞳の先には、今まさにフラッシュを浴びてカメラのレンズに映るAヌナがいる。
もう何度も仕事を一緒にしているベテランのカメラマンさんも気付かないくらい、ヌナそっくりだ。
「…俺は、ヌナの決めたことは尊重したい。
今きっと1番大変なのはヌナだから、ヌナが不安にならないように、何かあったら支えてあげたいと思うよ」
自分の思っていることを、嘘偽りなく言葉にした。
手の中の薄い紙コップから、じわじわと皮膚に熱が伝わる。そろそろ持っているのも辛くなってきそうだ。
「…そっか、
そうだよね」
ヒョンは何かに呆れたように、嘲笑した。
「…ヒョン、?」
このヒョンは最近ずっと、浮かない顔をしている。
それは、そう。ちょうど5日くらい前から。
…ヌナが復帰することを知った少し後から。
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ゆいか(プロフ) - ぴょんさん» ぴょんさま、コメント下さりありがとございます!思い出した…と思いきや、でした、笑まだ記憶を戻すには少し時間がかかりそうですので、暖かく見守っていただけたら嬉しいです笑こちらこそ読んでくださってありがとうございます♡ (2022年10月7日 0時) (レス) @page44 id: ebc0952f7b (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - えー!!記憶思い出した!?!!面白いです!!更新ありがとうございます!! (2022年9月29日 23時) (レス) @page39 id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか(プロフ) - なのこ5546さん» なのこさま、コメントくださりありがとうございます!すごく嬉しいお言葉ばかりで…大変励みになります、ありがとうございます( ; ; )これからも不定期にはなりますが更新頑張りますので是非また読みにいらしてください♡ (2022年9月23日 0時) (レス) id: ebc0952f7b (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - コメント失礼します🙇♀️小説とっても面白いです!!紅一点がたくさんある中、主人公の記憶がなくなる設定はなかなか無いのでワクワクしながら読んでしまいました。更新楽しみにしておりますこれからも頑張って下さいっ!! (2022年9月16日 12時) (レス) @page29 id: 88c8eec9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆいか | 作成日時:2022年8月23日 1時