ディノと車の中 ページ46
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スモークガラス越しに外を見つめるAヌナは、どこか身体に力が入ったような、緊張した面持ちだった。
…そうなって当然だ。何故なら今は、ヌナの復帰後はじめてのスケジュールに向かう最中だから。
ちょうど1週間前、6階のリビングに集められた僕たちは、クプスヒョンの口から語られる話に驚きを隠せなかった。
僕たち、と言っても正確には、95年のヒョンたち、ホシヒョンとウジヒョン、そしてドギョミヒョンを抜いた7人というのが正しい内訳だ。他の6人も同席はしていたが、話は通っていたらしく、真剣な面持ちでクプスヒョンの話を聞いているだけだった。
ヌナを活動に戻す。それは至極非現実的に聞こえたけど、その後のヌナの振る舞いを見て、納得せざるを得なかった。
ヌナは僕たちすら騙せるほど、ヌナのふりをした。
…記憶をなくす前の、ヌナのふり。
反対しようにも、そのヌナの振る舞いと、強い意志のこもった瞳に見つめられれば、僕たち7人は頷くしかなかった。
ヌナはこの1週間たらずという短い時間で、マネヒョンすら完全に騙せるほど、完璧にヌナを演じてみせた。
ただひとつ、変わったことがあるとすれば、
ヌナとホシヒョンが異様な程くっついていることだ。
どこに行くにもヒョンがヌナについていって後を追いかけて、空いた時間の殆どをヌナと一緒に過ごしていた。
今も例外なく、窓の外を見つめるヌナの隣にはホシヒョンが座っていて、ヌナの手を握っている。
ヌナはなんというか、平等に接する人だった。
記憶を失くす前はもちろん、失くした後だって。
コンテンツの時も、誰か1人にずっとくっついたりすることもなく、みんなに満遍なく話を振ったり、
病院に大人数でお見舞いに行けば、1番近い誰かとずっと喋るなんてこともなく、みんなの顔を見て、話してくれた。
そんなヌナが、こんなにもホシヒョンと一緒にいるなんて。
もちろんヒョンとヌナは同い年で、同期で、同じパフォーマンスチームで。
境遇で言えば1番共通点もあるし、おかしくはない。
それでもきっと、2人の間に、何かあったことは確実だと思う。
そして恐らくその引き金を引いたのは、
ホシヒョンだと思う。
「着いたぞ」
車が停まって、マネヒョンの言葉を合図に、それぞれが車から降りる。
ヌナとヒョンは、手を繋いだまま。
それを見たジュニヒョンの顔が、歪んだ気がした。
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ゆいか(プロフ) - ぴょんさん» ぴょんさま、コメント下さりありがとございます!思い出した…と思いきや、でした、笑まだ記憶を戻すには少し時間がかかりそうですので、暖かく見守っていただけたら嬉しいです笑こちらこそ読んでくださってありがとうございます♡ (2022年10月7日 0時) (レス) @page44 id: ebc0952f7b (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - えー!!記憶思い出した!?!!面白いです!!更新ありがとうございます!! (2022年9月29日 23時) (レス) @page39 id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいか(プロフ) - なのこ5546さん» なのこさま、コメントくださりありがとうございます!すごく嬉しいお言葉ばかりで…大変励みになります、ありがとうございます( ; ; )これからも不定期にはなりますが更新頑張りますので是非また読みにいらしてください♡ (2022年9月23日 0時) (レス) id: ebc0952f7b (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - コメント失礼します🙇♀️小説とっても面白いです!!紅一点がたくさんある中、主人公の記憶がなくなる設定はなかなか無いのでワクワクしながら読んでしまいました。更新楽しみにしておりますこれからも頑張って下さいっ!! (2022年9月16日 12時) (レス) @page29 id: 88c8eec9ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆいか | 作成日時:2022年8月23日 1時