す→素敵な貴方といつか… 1 ページ22
ー通学路ー
学園から少し離れた小さな広場。
そこに数人の女子高生。
彼女達のお目当てはここを帰り道としている長身でイケメンな彼。
中島裕翔。
その人であった。
今日も中島がそこを通ると遠慮した黄色い声援が飛び交う。
因みに遠慮した声援の理由。
それは。
以前は遠慮のない声援だったがここはご近所さん。
大きな声や音は迷惑でしかない。
ちょっとしたいざこざがあって、中島を拝める場所を取り上げられそうになり、彼女らは声を押さえる事にした。
本日、一緒に帰ることとなった岡本が頬を赤らめながら中島を拝めてる女子高生の団体を発見した。
岡本「あれ？前より増えた？」
中島「そう…かな？」
本人にとっていつもの風景なので気にした事はなかった。
それに中島はアイドルではないのだから彼女達にファンサービスする必要もない。
いつも通り、通り過ぎるだけ。
彼女達も自分達にとって中島はご当地アイドルみたいなもの。
一目見れればそれで満足なのである。
だが、ここ数日、そんな彼女達に混じって皆と違う眼差しで中島を見ていた者がいた。
憧れではなく、恋する瞳を持つ乙女である。
そんな彼女が中島に声を掛けたのは飼い犬の散歩をしている時だった。
ー散歩道ー
「あの！裕翔くん！」
ふいに名前を呼ばれて中島は後ろを振り返った。
そこに立っていたのは女子にしては少し背の高い女の子だった。
中島「はい？」
「私。裕翔くんが好きです」
突然の告白。
最も。
告白されることは何度も経験している中島なので特別動揺する訳でもなく、ドキドキと胸が高鳴る訳でもなく、中島はいつものように冷静だった。
中島「君の気持ちは嬉しいけど…」
なんてお決まりの言葉から始まって付き合えないことを説明し、断った。
告白を断られた女子の反応は2パターンある。
1つは「今まで通り見ていてもいいですか？」と言われるパターンと。
もう1つは泣きながら「さようなら」と去っていくパターンとある。
ところが今回はどちらも違っていた。
「私。これからも振り向いてもらえるよう頑張ります」
と笑顔で宣言された。
斯くして次の日から犬の散歩道を待ち伏せされる日々が始まった。
中島を見かけると一定の距離を歩き、別れ際に「裕翔くんが好き」と告白して去っていく。
それだけだった。
何度も断っているのだが彼女は根性があるのかなかなか諦めてくれない。
どうしようか。
中島は困り果てた。
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作者名：hina | 作成日時：2018年3月19日 15時
