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意識が朦朧とする中で慧は空を見上げた。

慧「あ〜。俺死ぬのかな?」

右の掌にべっとりと付いている血を空に掲げる。







あの時。

黒い石が光り、突然2人の男が現れた。

男がナイフを取り出すと怯えている同級生の1人にそれが下ろされた。

その瞬間に慧の脳裏に同級生の死が浮かんだ。

慧「ダメだ!」

叫ぶと同時に慧の体は動き、同級生を投げ飛ばした。

彼を襲う筈だったナイフは慧の左腕を通過する。

それを見た同級生は恐怖のあまり、その場を逃げ出した。

残された慧は再び、自分を襲おうとしているナイフを視界に捕らえる。

慧(嫌だ!死にたくない!)

思いが炸裂すると黒い石が再び光り、その眩しさに瞼を閉じた。





数秒後、眩しさに解放された慧が静かに瞼を開けるとそこには誰もいなかった。

幻でも見たのかと思ったが左腕から流れる血が現実であることを示している。





慧「俺の人生って何だったんだろうな。あ〜あ。死にたくないなぁ」

左腕の痛みを感じながら呟く。

「腕を切られたくらいじゃ死にはしないと思うけど」

突然、聞こえてきた声に慧は起き上がり、振り向いた。

1人の青年が立っていた。





少し離れた所に立つ青年は背が低く、一瞬少年かと思われたが近付く距離が短くなるとその表情はとても大人びていて、自分より年上に見えた。

慧「あんた…誰?」

涼介「俺?俺は涼介って言うんだ」

慧「何者?」

涼介「涼介」

慧「いや。名前じゃなくて…」

涼介「それより、動くなよ。出血止めるからな」

慧「はあ?何言って……」

涼介と名乗った青年は透明の石を取り出し、慧の傷口に近付けた。

すると石は輝き、出血が止まると腕の痛みがすっと引いた。

慧「え?どうなってるの?何が起きたんだ」

何が起きたのか訳が分からないと焦る慧に涼介は「石……」と呟いた。

慧「は?」

涼介「黒い石持ってるだろ。あれはダークストーンと言って、持ち主の願いを叶える代わりに生命を削るんだ」

慧「な…に、言って…」

涼介「石に何か願っただろ。そして、叶った。でも、体に異変が起きたはずだ。怠いとか目眩とか疲れやすくなったとか……」

慧「………確かに最近、体が怠かったり、ふらついたりはしたけど。でも、願いが叶ったなんて……」

慧(いや。願った。俺は確かに願った)

嫌がらせをする同級生が同じ思いをすればいい……と。

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作者名:hina | 作成日時:2020年10月4日 21時

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