Phantom thief ～月光の宝石～ (ページ20)

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しばらくすると店の扉が開き、3人のマダムが入ってきた。

マダムはレジ前の大貴を見つけるなり、彼を囲んだ。

「あら、大ちゃん。席空いてる？」

「相変わらず可愛いわねぇ」

「ほんとに愛くるしいわぁ」

一瞬で囲まれた大貴はそこから逃げるように素早く席を案内する。

大貴「いつものでいいですか？」

「ええ。お願い」

大貴「少々お待ち下さい」

一礼をした後、太陽のような笑顔にマダム達はたちまち。

「癒されるわぁ」

「ストレスなんて吹っ飛んじゃう」

「ストレスどころか疲れまで吹っ飛ぶわ」

和食屋『JUMP』は女子の間で「3人のイケメンがいる」と有名だ。

当然、彼らを目当てとして来ている女子達だったが、そんな女子達の間で密かにブームになっている事がある。

それはー。

『レア彼に会えたら、ラッキーな事が起きる』

レア彼とは彼らのもう1人の仲間、調理担当の涼介である。

涼介は人と接する事が得意ではないのでずっと調理場に籠っている。

したがって涼介が見れるのは調理場と食堂を繋ぐ唯一の窓口。

出来上がったものを並べる30cmの隙間。

通称『運命の窓』。

しかも、その隙間は彼が顔を覗かせない限り見れない位置にある。

なので彼は女子達の間で『レア彼』になっていた。

そんな4人の青年が切り盛りしている飲食店『JUMP』は怪盗y-ELLOW-voiceが正体を隠して日常を生活する場であった。

夜は怪盗y-ELLOW-voiceの活動があるので飲食店『JUMP』の営業はランチのみの15時まで。

店の掃除と明日の仕込みを終えた4人がダイニングに戻ってくると涼介が用意したお茶で一息付いていた。

まったりとしていた大貴がふと思い出す。

大貴「そう言えばさぁ。何で怪盗なんかしようと思った訳？」

何気ない疑問に3人がお互い顔を見合わせる。

光「話したことなかったけ？」

雄也「話したことないなぁ」

涼介「話すような事でもないし」

光「知ってどうなる事でもないし」

雄也「話す必要もないし」

涼雄光「「止めとくか」」

大貴「いや。話せよ。って言うか質問してるし。気になるだろ」

3人が出会ったのは3年前の暑い日々から解放され、過ごしやすくなった秋の季節だった。