代弁師 2 (ページ5)

今日:5 hit、昨日:9 hit、合計:18,341 hit

4 ページ5

涼介side

彼女を初めて見た時、どこか辛そうだった。

本当はバイオリンが好きじゃないのかも。

そう思った時、声が聞こえてきた。

ー何で、分かってくれないの。
　

彼女にそっくりな女性の霊。

女性は泣いていた。

すぐに赤い数珠を取り出して白い空間に渡った。

リュウが飛び立つのを横目で見ながら。

涼介「何故、泣いているの？」

泣いていた女性が振り返る。

ー貴方、私の声が聞こえるのね。

涼介「うん」

ーだったら、妹に伝えてほしいの。

涼介「いいよ」

ー見てのとおり、あの子は私の双子の妹なの。私は事故で死んだのだけど、妹はそれを自分のせいだと思っている。

あっ、何となく分かってきた。

涼介「バイオリニストは貴方の夢、だった？」

ーそう。自分で言うのも何だけど、成績良かったのよね。音大の推薦も決まっていたし、幾つも賞を取った。

涼介「その夢を代わりに妹さんが…」

ーその気持ちは嬉しいんだけどね。本当は妹もバイオリンは上手いのよ。だけど、最近の演奏は下手。当たり前よ。自分の為に弾いていないんだから。

涼介「妹さん。お姉さんを想いながら、バイオリンを弾いているからかな？凄く辛そう」

ーあ〜。やっぱり、他人でもバレちゃうのね。

まあ、僕の場合は代弁屋をやってるから、人や霊の表情から感情を読むのは少しだけ得意なんだけど。

ー妹はね。バイオリン一筋の私と違って何でも出来るの。だから、好きな事をしてほしいの。自分がやりたい事を自分で決めて、将来に繋げてほしい。それが私の願い。

涼介「じゃあ、彼女に伝えてみる？」

ーそんな事出来ないよ。だって、妹は私の声どころか姿さえ見えないもの。

涼介「出来るよ。ただし、妹さんが了解してくれればね。それと決まり事もあるけど」

ーしたい！出来るならぜひ！

涼介「分かった。じゃあ、待ってて」

現実の世界に戻ってきた僕は妹さんにお姉さんの霊が存在する事から説明した。

最初は疑っていた妹さんだったけれど、最後は何とか信じてくれた。

あとはお姉さんと妹さんを会わせるだけ。

だけど、ここはいつもの館じゃない。

兄ちゃんズもいない。

まずは人目の付かない薄暗い場所に移動して、絶対にお姉さんに触らないように約束した。

これはお姉さんにもお願いしてある。

まあ、万が一の事があったら、彼らがフォローしてくれると思う。

僕は数珠に念を入れた。