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運命の見習い術師 1 ページ35

慧side



天ノ一族と地ノ一族は大昔から付き合いがあった。

というよりは先祖は一緒だ。

当然、大ちゃんとも小さい頃から一緒に遊んでいた。

要するに俺達は幼なじみの関係。

涼介、いや俺達4人の将来を左右する事件があったのは。

俺と光は17歳。

大ちゃんが16歳。

そして、涼介が14歳の時だった。

その頃の涼介は健康で風邪なんて滅多に引かなかった。

それどころか霊聴の才もなく、将来は術師になる…筈だった。





天地ノ一族には共同所有の山があって、そこに毎年夏休みに6歳から15歳の子供が集まり、霊力の基礎となるものを学ぶ決まりがあった。

その年の夏休みに参加するのは涼介だけだったけれど、俺達3人はどうしても一緒に過ごしたいと無理矢理着いて行った。

何故って、本格的な修行が俺と光は来年、大ちゃんは再来年に始まる。

4人で過ごせる日が激減するんだ。

だから、俺達は『思い出作りに』なんて軽い気持ちで参加した。







その日は川遊びをやりながら、水の流れを介して霊力の流れを感じるというものをやっていた。

俺と光と大ちゃんはやる必要がないし、涼介も何回とやってきたから他の子供達より早く終わった。

時間が余った俺達は上流に遊びに行った。





光「そろそろ戻る時間だな」

岩に置いた携帯電話から終了の音楽が流れ、俺達は川から上がって濡れた足をタオルで拭いていたその時、それが聞こえてきた。



ー………てー



一瞬、3人の誰かが言ったのかと思ったけれど、一生懸命足を拭いているのを見て、気のせいだと思った。

「楽しかったね」と屋敷に戻ろうと足を進めるとふと、大ちゃんがいない事に気付いて俺達は振り返った。

大ちゃんは足を止めて、青空を見上げていた。

光「大ちゃん!」

大貴「あっ、ごめん」

慧「どうしたの?何か気になることでも?」

大貴「何でもない。気のせいだったみたい」

慧「そ」

光「あ〜。それにしても腹減った〜」

涼介「今日もいっぱい動いたからね」

大貴「なあ。今日のご飯は何だろな」

涼介「そろそろカレーライスが出そう」

慧「あ〜。そんな感じする」

大貴「おばちゃん、カレーライスは楽だって言って1週間に1回は作るもんな」

光「美味しいからいいけど」

なんて他愛ない話をしながら、俺達は屋敷に戻っていった。





『気のせい』と思っていた事が後に俺達を苦しめる事になるなんて……俺は、思わなかったんだよ。

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作者名:hina | 作成日時:2023年5月20日 8時

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