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涼介side



彼との約束を守るには一刻も早く、体を治さなければならなかった。

僕は裕翔先生が困ると分かっていて、まだ頭がボヤけている状態のまま、早く治してほしいと頼んだ。

その直後にリュウが『代弁はしなくてもいいのよ』と入ってきて、その理由を聞いた僕は重怠い体を全体で感じながら、起き上がった。





裕翔「涼介君!?」

慌てた裕翔先生が僕の体を支える。

裕翔「まだ、寝てないとダメでしょ!」

涼介「でも…。うっ」

視界がぐらぐらと揺れると同時に襲ってくる悪心。

裕翔「熱が高い上に貧血が酷いんだから」

涼介「でも、早くしないと彼女が…」

裕翔「彼女…?何を」

涼介「訳はちゃんと話すからお願い。僕を応接室に行かせて」

僕は必死に頼み込んだ。

このチャンスを逃したくないから。

涼介「裕翔先生がダメって言っても、僕は行くから」

力の限り裕翔先生を押しのけ、立ち上がろうとした。

だけれども、今の僕の力で押しのけられるはずもない。

すると裕翔先生から小さなため息が聞こえてきた。

裕翔「分かった。ほんと強情だね。涼介君は」

涼介「裕翔先生」

裕翔「その代わり、俺が抱っこしていく。でないと今の涼介君ではまともに歩けないからね」

涼介「え?」




抱っ…こ…?




僕の頭に裕翔先生の背中に乗る僕の姿が浮かぶ。

おんぶ…。

今度は前でしがみついている僕。

前抱っこ……。

そして。

お姫様だっ……いやいやいや。





そんな格好、恥ずかしすぎる。

涼介「ぼっ、僕歩いて……わあっ!」

歩いて行くと言おうとしたら、急に僕の体が宙に浮いた。

近かった裕翔先生が一瞬で離れる。

次の瞬間には僕の体は大きくなったリュウの背中に乗っていた。

涼介「リュウ!」

リュウ『これなら大丈夫なのよ』

1本の尻尾を器用にくるくる回して、そこに僕の背中をくっ付ける。

涼介「有難う」

リュウ『どういたしましてなのよ』





ふと裕翔先生を見ると僕よりも視線の低いところから、ぽかんと見上げている。

あっ、そうか。

大きくなったリュウの姿は裕翔先生には見えないんだ。





基本、『式』は人には見えない。

ただ、リュウや雄也みたいに霊力の強い『式』は普通の人にも姿を見せる事が出来る。

でも、体が大きくなったリュウは見せる力を弱めているので裕翔先生の目には僕が宙に浮いている状態に見えていた。

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作者名:hina | 作成日時:2023年5月20日 8時

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