けい ページ22
全ての操作を終えた涼介は椅子の背に全身を預けていた。
その表情に疲労が見える。
慧「お疲れ様。横になる?」
目を閉じていた涼介は少しだけ目を開けて、弱々しい声で「うん」と答えた。
ふらつく涼介の体を支えて、カプセルまで連れ添う。
横になった涼介は一息吐いた。
慧「本当に行かないのか?研究都市。今ならまだ、間に合う」
無駄だと知りつつも俺は涼介に説得を試みた。
涼介がゆっくりと首を振る。
涼介「世界の浄化が終わった今、人々の生活エネルギーは返さないと」
返ってくる答えは以前と同じ。
俺は記憶を取り戻し、世界の真実を知り、涼介の決意を知った。
その時と同じ事を今も口にする。
決意は変わらない……か。
涼介は生活エネルギーで生きている。
今までは学問都市も研究都市も稼働していなかったから、エネルギーが必要とされていなかった。
でも、その内、人々は学問都市に通うようになるだろう。
近代都市に住んでいるのは俺達兄弟だけだが、世界が動けば、どうなるか分からない。
研究都市は……。
研究者は俺ただ1人になってしまったけれど、俺は研究を止めるつもりはないし、こちらもどうなるか分からない。
もしかしたら、人が増える可能性だってあり得る。
そうすれば、生活エネルギーは今よりも必要になってくる。
どちらにせよ。
涼介に十分な必要エネルギーの確保は難しい。
いや。
このまま、近代都市や研究都市に人がいなければ、何とかなるかもしれない。
それに涼介にとって、本当に住みやすい所は何でも揃っている研究所。
研究所ならエネルギーだって簡単に補給出来る。
でも、そうなると前と同じ生活に戻ってしまう。
涼介の為に皆が中央都市と研究所と家と通った時のように。
1度、その忙しさに宏兄と雄兄が風邪でダウンした事があった。
涼介はそれを知っている。
研究所に住み、生きていくには兄弟達の負担が増える。
だから、涼介は『活動しない』と決めたんだ。
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hina(プロフ) - 涼介さん» 随分前にコメント下さったのに返事遅くなってご免なさい。面白いと言ってくださって嬉しいです。有難うございます。 (2021年4月21日 22時) (レス) id: 255c6bfbbf (このIDを非表示/違反報告)
涼介(プロフ) - 天才すぎます。はい、ただただオモロい。失礼致しました。w (2020年12月26日 19時) (レス) id: d7d73abaf2 (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - Rare fruitさん» 有難うございます。以前にも誉めて頂いて嬉しい限りです。尊敬は照れますね。 (2019年3月15日 7時) (レス) id: 0f49b991e3 (このIDを非表示/違反報告)
Rare fruit(プロフ) - 完結おめでとうございます。hinaさんの作品はどれも最初から設定がしっかりしていて、わくわくする展開の連続で、すごいなあと尊敬しています。新作すごく楽しみです!待ってます! (2019年3月13日 22時) (レス) id: 362d8b3af6 (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - JUMPLOVEさん» 本当にいつも嬉しいお言葉、有難うございます。来週あたりにお話、出せたらいいなと思っております(あくまでも予定ですが) (2019年3月7日 22時) (レス) id: 0f49b991e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hina | 作成日時:2019年2月1日 21時