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父「研究所内はどんな感染源が飛び交っているか分からない。だから、行動出来る範囲が1つの部屋だけになる」
雄也「それって完全隔離じゃないか!」
宏太「そんな事したら家に帰れない。兄弟と過ごす時間もなくなる!」
父「完全になくなるわけではない。天気、温度、湿度など条件が揃えば家に帰れる。とは言っても家に帰っても、いろいろ約束事はあるが」
慧「でも、家に帰る回数は確実に減る」
今は月3、4回は家に帰っているがそれでも、他の兄弟と一緒に過ごす時間は圧倒的に少ない。
そのせいで涼介に対する他の兄弟達の態度がどこかぎこちない。
特に一番下の双子が一緒に暮らしていたのは3歳までだから、涼介が兄という感覚が殆どないに等しい。
それが隔離になってしまったら、家に帰れるのは数ヵ月に1回になってしまう。
これでは益々、兄弟達との溝が深くなっていく。
でも………。
父「もし、この話を断ったとして、今まで通りに過ごして感染してしまったら……」
そう。
もし、万が一、感染してしまったら。
今はセントラルコンピュータで空気や温度など全てを管理しているから、人が一生で感染する確率なんて相当低い。
でも……確率が0じゃない。
母「感染なんてそうそうかかるものじゃない。でも、ないとは言い切れない」
雄也「じゃあ、涼介にとって隔離されるほうが安全」
俺達の中でほぼ答えが出ている理由はそれだった。
健康で生きて欲しい。
そう願うほうが強い。
問題は……。
宏太「隔離したら自由がない」
父「そのとおりだ」
慧「能力向上の為に毎日、行動が縛られて、今度は感染の為に自由まで奪われる」
雄也「ひどい話だよな」
宏太「このことも涼介は知っているのか?」
父「知っている」
宏太「なんて?」
母「感染が治る薬が出来るならいいよって」
「「…………」」
俺達はどうしようか迷った。
世の中のためを考えるなら、この話を受けるしかない。
涼介の健康を考えるならやるしかない。
でも受ければ、涼介の自由が奪われる。
それと免疫力のない感染源と耐性力がある薬が何なのか調べられる。
でも、それはいつまでなのか?
特定出来るまでどれだけ体を調べられるのか?
分からない。
それでも……。
感染に効く薬が出来る事を祈って。
少しでも早く特定出来る事を祈って。
何より……。
「健康で生きて欲しい」
そうして、俺達は間違った選択をしてしまったんだ。
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hina(プロフ) - 涼介さん» 随分前にコメント下さったのに返事遅くなってご免なさい。面白いと言ってくださって嬉しいです。有難うございます。 (2021年4月21日 22時) (レス) id: 255c6bfbbf (このIDを非表示/違反報告)
涼介(プロフ) - 天才すぎます。はい、ただただオモロい。失礼致しました。w (2020年12月26日 19時) (レス) id: d7d73abaf2 (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - Rare fruitさん» 有難うございます。以前にも誉めて頂いて嬉しい限りです。尊敬は照れますね。 (2019年3月15日 7時) (レス) id: 0f49b991e3 (このIDを非表示/違反報告)
Rare fruit(プロフ) - 完結おめでとうございます。hinaさんの作品はどれも最初から設定がしっかりしていて、わくわくする展開の連続で、すごいなあと尊敬しています。新作すごく楽しみです!待ってます! (2019年3月13日 22時) (レス) id: 362d8b3af6 (このIDを非表示/違反報告)
hina(プロフ) - JUMPLOVEさん» 本当にいつも嬉しいお言葉、有難うございます。来週あたりにお話、出せたらいいなと思っております(あくまでも予定ですが) (2019年3月7日 22時) (レス) id: 0f49b991e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:hina | 作成日時:2019年2月1日 21時