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story20 ページ21

桐山side



「まずは、身体の治療から。その後に心。正直、どこまで回復できるかは分からない。仕事かできるようになるかどうかも…」



橘先生から聞いた状況は、神ちゃんがいかに傷ついてきたかを改めて感じる内容だった。


今まで俺たちの暴力によって作られた怪我は、治療をすれば良くなること。
タバコの痕は完全に消えることはないこと。
それ以上に幾度となく傷つけられてきた神ちゃんの身体の中はボロボロ。
そして、流産の経験は決して一度や二度ではないこと。
恐らく今後妊娠は出来ないこと。



「智洋が目を覚ました時、身体のこと話したんだ。そしたら、特に表情も変えずに、俺がまた殺したんやねって」
「そんな…」
「あいつが男女体だっていうのは、俺が担当になった時から分かってたんだ。智洋は特に生理痛とか男女体が故の体の影響が大きい体質だった。だから妊娠もしやすかった」
「そんなん、なんも知らんかった…」
「絶対言わないでって口止めされてたからな。智洋も周りにバレないように気使ってたし。流産する度に俺んとこ来て、またダメやったって。俺にはちゃんとパートナーがいるって言ってたから、それを信じてたんだ」
「…っ」
「流産の処理って本当痛いんだ。麻酔もせずに赤ちゃんを掻きださなきゃいけない。体にも心にも大きなダメージがある。だから仕事に影響でてもおかしくないのに、あいつはお前らの前では完全に隠し通した。本当頑張りすぎだよ」



俺たちが見てきた神ちゃんは、本当の神ちゃんからはきっと、ほど遠いんだと思う。孤独を怖がって、自分さえ我慢すればとたくさんのことに耐えて。


お腹に宿った子が亡くなる度に行われる処理を、神ちゃんはどんな風に受け止めてたんだろう。神ちゃんのことだから、この子が受けた痛みに比べて自分なんかって思ってそうやな。



「…っ先生、俺たちに、何が出来ますか…ひとりきりで、たったひとりで頑張ってる神ちゃんに、何をしてやれますか」



涙で顔をぐちゃぐちゃにした濱ちゃんが、絞り出すように話し出した。



「正直、分からない。情けない話だけど、あいつが何を望んでいるのか見えないんだ…」
「…っ…」
「俺が思うのは、あいつをできるだけひとりにしないことかな。自分のそばには誰かがいるって感じてもらいたい」
「そんなんでえぇんやったら、いくらでもそばにおったる。神ちゃんが安心できるまで、いつまででも」



あの日、神ちゃんに寄り添っていくという誓い。
再スタートや



.

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はる(プロフ) - この作品が大好きです…!いつかまた更新される日を楽しみにまっています!これからも頑張ってください! (2020年11月20日 14時) (レス) id: 84757d918a (このIDを非表示/違反報告)
ホムヒカニア - 思わず涙が…この作品好きです!これからも更新頑張ってください。 (2019年9月6日 23時) (レス) id: 313b3a8dad (このIDを非表示/違反報告)
レゴブロ - この作品すごい好きです!更新頑張ってください! (2019年9月1日 14時) (レス) id: 44570defec (このIDを非表示/違反報告)
ゆきの - 読んでいて、毎回うるうるしています。更新楽しみにしてます! (2019年8月31日 0時) (レス) id: a85abdd84f (このIDを非表示/違反報告)
? は ま た(プロフ) - 更新楽しみにしてます! (2019年8月27日 20時) (レス) id: 9db9567949 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さりー | 作成日時:2016年6月12日 8時

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