とお ページ10
「Aは、もう、この先長くないことくらい、わかってるんだろうけど」
ワインレッドのタイツを履いた足を組み、白衣を羽織る有理子は、レントゲン写真を眺めながら溜息を吐いた。……もう九回目。
「有理子、わかってるよ。私は生きられて十一月まで。このプロポーズもなかったことになる。それでオッケー、万々歳、幕引きも拍手喝采。あいつの家もそれでいいんじゃないの」
それで、私は
「相手がそう思ってる訳ないだろ。でも、思ったより進行してたよ。今ここであたしと喋っていられるのが奇跡ってくらいには。十一月まで生きられるのだって、保証はない。ちゃんと覚えてろよ」
有理子の言葉が、ぼろぼろで穴だらけの心に刺さる。やめてくれ、もう刺さるところなんて無いよ。
「あー、うん、そうだね。気をつけるよ」
「あ、Aっ! お前、ちゃんとゆっくり立てよ! あと、ソレは諦めろ」
「そうだね。じゃあね、有理子」
「ああ、ばいばい」
さらっと流したように見せたけど、手の震えが止まらずに、スカートに水滴が落ちた。
傘、忘れちゃったな。
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猫谷川 - はい。ありがとうございます。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 3fcb13ae47 (このIDを非表示/違反報告)
硝子体(プロフ) - 猫谷川さん» ありがとうございます! 子供の性別は特に決めてはいないので、脳内補完してもらえればと。気ままに書いてみたりしますので、またお会いできれば、そのときに。 (2018年10月28日 15時) (レス) id: 63db8499a6 (このIDを非表示/違反報告)
猫谷川 - ありがとうございます!ゆう君?ゆうちゃん?も出てきてくれて良かったです。やっぱりいいですね! (2018年10月28日 14時) (レス) id: 3fcb13ae47 (このIDを非表示/違反報告)
硝子体(プロフ) - 猫谷川さん» 了解しました! 少しだけお待ちください! (2018年10月28日 7時) (レス) id: 63db8499a6 (このIDを非表示/違反報告)
猫谷川 - ではいいですか?その、もし元気だったらと考えてしまい泣いてしまったので勘九郎さんと幸せなところを読みたいです。 (2018年10月28日 2時) (レス) id: 3fcb13ae47 (このIDを非表示/違反報告)
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