この無慈悲な世界に能力で希望を【リレー小説】 (ページ19)

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春眠暁を覚えず【倖月儚羽/アカツキ@VII】ページ19

一気に様々なことが起こり過ぎている。
青年が声を掛けた少女を、女装をした青年──口調からして合っているだろう──が能力で運んだ。満開の桜が一気に花弁を散らした。フードを被った少女が崩れ落ち、周辺の木々が壊れ果てたかと思えば、次の瞬間には元通りになった。倒れていた少女は、目を覚まし御礼と言って周辺一面を花畑にし、何やら告げて何処かへ向かった。
ふむ、改めて言葉にすると、おかしな程に様々なことが詰め込まれている。
青年は気だるげな動作で木の根元に戻る。また新たな訪問者が二人来ているようだった。
彼女らから離れた位置に行くと、器用に大樹を登っていき、ある程度上の方の太い枝に腰掛けた。

「……嫌だなぁ。俺はどう足掻いても、能力から逃げられないのか」

大樹の外は能力者を異端とする者達が集っている。珍品としてオークションに出され、人権などあって無いものになる。
しかし、大樹の元に寄ってみれば、其処には能力者が集っている。唯一の安寧と平穏を守らんとする。この場では能力を使うのも普通だ。
何処に行こうと、能力の無い世界は無い。

「……もう良いや。鳥達、俺を起こそうとする者がいたら、妨げてくれ」

眠れば、些末な悩みも夢幻に溶けるだろう。
青年が空に向け声を出せば、雀や鳶、燕などが数匹寄ってきて、青年の傍の枝に並んで止まった。
それを見届けると、青年は安定する体勢を探って横たわり、外界を視界からシャットアウトした。

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