この無慈悲な世界に能力で希望を【リレー小説】 (ページ11)

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満開【倖月儚羽/アカツキ@VII】ページ11

何やら騒がしいと思い寝足りない眼を無理矢理こじ開けると、視界を幾つかの桜色が過ぎった。
少しだけ顔を上げてみれば、眠る前は花開いていなかった筈の大樹が、満開の桜をまとっている。きっと、誰かの能力なのだろう。

「良いなぁ……俺より余程平和な能力だ」

未だ暗いままの精神で、誰にともなく呟いた。
木の上を見遣れば、一人の少女。その下には、二人の性別がよく分からない人──恐らくは、男装している少女と、女装している青年だろうとは思うが、自信は無い。また少し離れた所には、傍に杖を落として少女が倒れ込んでいるのが見えた。

「えっと…少女だね…僕は。桜？うんうん、好きだ、綺麗だよな。…で、なんか人が倒れてるんだけど。助けに行ったほうがいいか？」

そんな声が、性別不明のうちの一人から発せられる。予測通り、男装少女だった様だ。枝上の少女に話し掛けている。彼女が桜を開花させたのだろうか。
倒れた少女を助けるのに迷っているらしい。取り敢えず、青年は起き上がって欠伸をし、じっと目を凝らして倒れた少女を見つめる。
動こうとして動けないような、微かな身動ぎがある。それに加え、そろそろ意識が落ちそうな感じもある。明らかに要救助者だ。

「俺が行くよ。人一人抱えるなら、男手の方が良いだろ」

名前も知らない少女らに聞こえるように言い、青年は倒れた少女に小走りで駆け寄って声を掛けた。

「もしもし、大丈夫？寝るのに問題が無いなら、眠った方が楽だよ。……取り敢えず、向こうまで運びたいんだけど、良いかな？」